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ムスメの文字は、どせいさん。(MOTHER2 ギーグの逆襲)

今週、小学校に入学したムスメは、手紙を書くのが好きだ。「べんきょうしたよ」とか「だいすきだよ」とか、「ぽけもんかーどほしい」とか。折り紙の裏やレターセットに絵や文字を書いて、週に何枚も渡してくれる。

ちょっとだけ照れくさいけど、その何倍もうれしく思う。自分の気持ちを形にして、誰かに伝えられること。仕事でも友だちづきあいでも、大事なのはそこだ。



実家のゲーム部屋の壁には、額縁に入った父の似顔絵が、もう30年以上も飾られている。妹が4歳ごろにクレヨンで描いた絵を、父がいたく気に入ったのだ。

妹が中学生になったころ、「この絵、ヘタだし恥ずかしいから外してよ」と父に話していた。でも父は外さなかった。

「うまいとか、ヘタとかやない。この絵は小さいときにしか描けないんや」。「いまのお前はもう、こんなふうには描けんやろう。だから価値があるんや」。隣でロクヨンを遊びながら、なるほどなー、と思ったことを覚えている。

幼児の絵だから当たり前だけど、ところどころ色がはみ出ているし、目や鼻の大きさもめちゃくちゃだ。でも、父へのまなざしがまっすぐ伝わってくる。力強い絵だ。実家に帰るといつもいい絵だなと思えるから、父の判断は正しかったのだろう。

手紙を眺めながら思う。いまのムスメのひらがなは、どせいさんフォントに似ているぞ。なにしろ、糸井さんの娘さんの文字がもとになっているのだから、似るのもしょうがない。

やさしいタオル(どせいさん) / ほぼ日ストア

「ん」はなんだかギザギザだし、「ぬ」や「ゆ」の曲線もうまく書けていない。でもこれこそが、「いましか書けない文字」なのだと思う。

君はがんばりやだから、国語の授業で、たくさんひらがなを練習するのだろう。そうしたらすぐに、「>」は「く」になっちゃうだろうし、きれいな「あ」を書けるようにもなるはずだ。

それはヒトとしてじつに正しい成長であり、親として、とてもうれしいことなんだけど…….。なぜだろうね。すこしだけ寂しい気持ちにもなってしまう。

いまなら、妹の絵を飾った父の気持ちがよくわかる。ぼくも、この手紙をとっておこう。ずっととっておこう。

成長も楽しみだけど、いまの君の姿も、どせいさんみたいなこの文字も、ずっと忘れないでいよう。入学、おめでとう。

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