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プレイヤーとゲームをつなぐもの。(ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム)

ある日の夜、自宅のリビングで『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』をクリアした。いやもう、すばらしかった。まさかあの前作を、ここまで超えてくるなんて。

心に残った場面はたくさんある。だけど、いまでこそはっきり覚えているこの記憶は、数週間、数か月、数年が経つごとに薄れていってしまうのだろう。それこそ、現実の記憶と同じように。だから、いま心に残っているハイラルの風景を残しておきたい。この記憶が薄れてしまう前に、ウツシエを撮るがごとく、思いつくままに書き残しておこう。

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『ゼルダ』の名レビューといえば、1999年の週刊ファミ通に掲載された永田さんのインプレッションだ。初めて読んだとき、感動しつつも「うらやましいな」と感じたことを覚えている。なぜなら僕は『時のオカリナ』の3D操作になじめず、水の神殿で詰まってしまい、最後まで楽しめなかったからだ。それからも『ゼルダ』はシリーズを追っていたけれど、「スマブラに参戦しているリンクの活躍するゲーム」くらいの、かなりの距離を置いたつきあいをしていたように思う。

それは『ブレス オブ ザ ワイルド』をプレイしても変わらなかった。ゲームの出来ばえに感動したけれど、特別にのめり込んだわけではなかった。だけど本作は、『ティアーズ オブ ザ キングダム』は違った。強い思いが残った。だから僕は、恥ずかしげもなく名レビューのフォーマットを借りて、ゲームの思い出を残しておこうと思う。もちろん、永田さんの文章に比べればとてもとても拙いことだろう。でも、あの日うらやましいと感じた永田さんの気持ちが、少しでも実感できたうれしさ。その感動もいっしょに残しておくには、この書きかたしかないと思ったのだ。

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たとえば僕はリンゴが好きだ。イノシシが好きだ。銀ルピーが好きだ。マヤウシユの祠の謎解きが好きだ。トーレルーフの緑色の光が好きだ。槍でラッシュをかけるときの爽快感が好きだ。ライネルの頭に浮かぶ「?」が好きだ。バクダン矢を放ったときのエフェクトが好きだ。ヘッドショットを決めたときの手ごたえが好きだ。洞窟の中を歩き回ってマヨイを見つけるのが好きだ。鳥望台から勢いよく飛び上がる疾走感が好きだ。敵の拠点を壊滅させてから宝箱が開くまでの演出が好きだ。祠の名前の由来を考えながら過ごすロード時間が好きだ。急いでいるのにどうしても無視できないコログが好きだ。チューリの能力でぐぐっと身体が押し出される感覚が好きだ。ブロックゴーレムの造形が好きだ。料理するときの鼻歌が好きだ。無理だろうなと思いきや骨でできた馬に乗れてしまうところが好きだ。ハートの上限が増えるときの効果音が好きだ。ローメイ島の仕掛けが好きだ。空島から眺める地平線と、そこに沈むオレンジ色の夕陽が好きだ。毎回スキップせずに見てしまうボックリンのダンスが好きだ。ゾナウギアのカプセルがぞろぞろと出てくるところが好きだ。Aボタンを連打して小気味よくポゥをつかまえる感触が好きだ。暗闇の衣に着替えた直後は瘴気を防げないゲームバランスが好きだ。ハテノ村のBGMが好きだ。ウオトリー村の穏やかな雰囲気が好きだ。矢で射ったアカリバナのまわりがじんわりと灯ってゆく時間が好きだ。ブループリントで組みあがっていくパーツの整然とした挙動が好きだ。モドレコを使ったあと、戻るまで数秒間待ってくれる気遣いが好きだ。上等コアブロック粉砕槍で岩を砕く贅沢さが、たまらなく好きだ。Twitterでシェアされたいろんな動画を眺めるのが好きだ。ネタバレしすぎないよう適度に横から助言をくれる妻が好きだ。口癖変わらぬプルアが好きだ。ペーンの仕事熱心なところが好きだ。カバンダのちょっとおまぬけなセリフも、おいおいお前さあ、と思うが好きだ。娘を見送るエノキダ夫妻のふるまいが好きだ。シドの声が好きだ。ラストシーンが泣けるほど好きだ。憂いと決意を帯びたゼルダの表情が好きだ。プレイヤーとゲームをつないでくれる、ぼくらのリンクが大好きだ。

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"やっぱり、言葉はあふれて本流を持たない"。その言葉どおりになってしまった。一生のうちで、ここまでの名作に出会えることはそうそうない。ゲームと過ごした時間をひとつの思い出にして、いつまでも心にしまっておけたら。そんなことを思う。

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