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リーダーシップ

僕は子どもにコーチとして教えるとき、必ず身振り手ぶりを踏まえて指導します。ビジネスマンの話で、手の動きを入れたり壇上を移動しながら話した方が聴者は話に聞き入ってくれると聞いたことがあります。特に意識しているわけではないですが、小学生が相手の場合その格好が面白いようでよく真似してくれています。

なぜそうなったかというと僕は高校や大学など学生スポーツではなくbjリーグやNBAなどプロの試合をよく見て育ちました。プロの試合で見かける選手のハドルやベンチの様子では、声をかけている選手は皆動きをつけて話しかけています。背中で語るリーダーシップも素晴らしいですが、動きに感情を込めたリーダーシップの取り方は見ている人の心も動かします。リーダーシップとは、人の心を正しい方向へ導けるものです。

NBAのクリス・ポールは今季NBAファイナルにキャリア16年目にして辿り着きました。彼ほどの素晴らしいリーダーシップを持った選手でもなぜ16年かかったのでしょうか。彼のインタビューから言葉を抜粋します。

「若い頃はリーダーシップの取り方に苦労したよ。厳しいリーダーシップはチームメイトとの間に緊張を生み、ホーネッツ(現ペリカンズ)での最終年も顕著だった。今は人に厳しくすべき時、成長を促すときの見極めができるようになった。」

彼をホーネッツ時代と今のサンズで2度コーチしているモンティ・ウィリアムスは「リーダーシップには注意が必要。誰も着いてこれないリーダーシップはただ一人で歩いているのと同じだ」と語ります。

サンズが優勝できなかったのは残念でしたがポールのリーダーシップは素晴らしいものでした。何年も前から彼のプレーを見ていますが時間が経つとともに彼の凄さがよりわかります。リーダーシップは孤独なものだと時に語られますが、僕はそう思いません。ウィリアムスが言うようにただ一人で歩いているリーダーシップは誰も着いてこれません。リーダーシップとは、まわりと一緒に歩くことから始まるのです。

僕が大学1年生の頃、とにかくチームをまとめるのに苦労していました。負けが続いたシーズンの途中からゲームキャプテンを任せてもらい、なんとかチームをひとつにしようと試行錯誤していましたがゲームのたびに言い争いになってしまいました。チームをまとめる、と書きましたが実際はそんなに素晴らしい行為ではありませんでした。

高校までの8年間のキャリアの中で、僕はさまざまな練習を行ってきました。それはチームでの練習ではなく、個人のことです。道路標識の看板めがけてシュート練習するところから始まり、大学の頃にはプロ選手のワークアウト動画を見て練習するようになりました。大学で1番練習したのはコービー・ブライアントのポストムーブで身長175センチしかない僕でもポストでの1対1を止められることはほぼありませんでした。(超弱小リーグでの話ですが笑)身体能力の低い僕にとって練習を工夫することは必要でした。

だからこそ、連敗している状況で何もしないチームに腹が立っていました。各選手の役割、オフェンスのファーストオプション、ディフェンスにおけるコミュニケーションなどチームとして機能すべきところが理解されないまま、同じことを繰り返し負けるのは嫌でした。

そこで僕がとった行動は、とにかくプレーで引っ張ることでした。プレーで引っ張り、気持ちでついて来いと。今になってわかりますがチームの状態が悪い時に何度も精神的な訴えかけに頼るのはよくありません。本当に状態が悪い時に、精神的な話し合いが必要なのはシーズンに一度くらいでしょうか。悪い状態だからこそ具体的でクリエイティブな会話が必要です。結果的に僕がゲームキャプテンを務める前と状況は変わらず、前半で試合を決められ、ハーフタイムに言い争いが起こる始末でした。ウィリアムスの言葉の通り、当時の僕はただ一人で歩いているだけの状態でした。

何かを変える必要がありました。シーズンの折り返しにきて、アプローチの方法を変えなければいけないと感じていました。なので、僕はプレーで引っ張りついて来させる方法から、チームメイトの基準に合わせて何ができるかを考えるようにしました。複雑な考えからシンプルなゲームプランに変更し、1回の話し合いの中でのテーマを一つに絞ってゲームを戦いました。基礎能力が高くないチームにとって、あれもこれもと指示があるのはよくないと気づけました。

アプローチを変えてから、チームのパフォーマンスは飛躍的に向上しました。接戦で勝つことができるようになり、チームとしてのゲームプランも共有できていたように思います。シーズンを勝率5割で終えることができて、何よりも精神的な言い合いではなく、具体的なプレーの話が選手の間に生まれました。

僕は独りよがりなリーダーシップで失敗していたのです。精神的なところに頼ったリーダーシップは必ず失敗します。大事なのはまわりと一緒になって具体的な話を進めること。そうすれば必ずいい感情が勝手に芽生えます。それを促すのが真のリーダーシップです。チームの状態が悪い時、良すぎて緩みが生まれそうな時、真っ先にハドルを組み話し出すリーダーシップがチームリーダーには必要です。僕にそれを教えてくれたのはチームメイトでした。あの時、僕の言うことを黙って聞くのではなく、はっきりと僕のリーダーシップが嫌いだ。と伝えてくれたおかげで僕は自分の過ちに気づけました。ありがとう。

バスケットボールにおいて同じチームは2度と存在しません。そして選手は人間であり、気分のいい日悪い日、得手不得手があります。そしてシーズンの中にはいい日もあれば悪い日もあります。2年目に正式にキャプテンになった時や4年目に最高学年になった時も僕はリーダーシップに苦労しました。しかし、リーダーシップにとって最も大事なまわりと一緒に歩くということはコーチになった今でも僕を何度も助けてくれているのです。


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