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ロシアの不倫とフランスの不倫

最近、『アンナ・カレーニナ』と『ボヴァリー夫人』を読みました。意図したわけではないですが、どちらも不倫。なぜ女性が題名になるといつも不倫なんだ?と思わなくもないですが、何にせよ不倫文学に浸かる夏になりました。

どちらかというと、こういう文学は好きじゃないんですよね。だって最後見えてるし。どう展開したところで、不倫万歳!二人は幸せになりました、めでたしめでたし、とはならないじゃないですか。どっちかが死ぬか、二人とも死ぬか、駆け落ちして落ちぶれるか、別れるか、殺すか、殺されるか。

なのであまり楽しみに読んだわけではないのですが、ロシアの不倫文学とフランスの不倫文学があまりにも違ったのが興味深かったので書いてみます。※ネタバレします。

どっちの女性も、特に自分から望んだわけではないが、社会的には良い結婚をしています。アンナは官僚の夫、ボヴァリー夫人の夫は医師です。でも男性として凡庸で面白くないんですよね。で、二人とも魅力的な男性と会って恋をしてしまうと。

うん、ここまでは分かります。

そのあとですよ。アンナ・カレーニナの旦那は超カタブツ官僚ですから不倫なんて許されないと怒るかと思いきや、最初はゴタゴタしたものの突然目覚めて、妻も不倫相手も、不義の子もみんなゆるすんです。

はい…?と、ちょっと声が出ました。やっぱり時代と国が違うと理解できないことがあるなぁと思いました。

それで、まだ離婚してない状態で、アンナは不倫相手との子どもを自宅で出産し、そこには旦那も不倫相手もいるんです。こんな場面、どんなメロドラマでも見たことないです。

そしてゆるされたのになぜか不倫相手は自殺未遂。

回復し、アンナは子どもと不倫相手と長期のイタリア旅行。たまに旦那との子を見たいとチラっと帰ってくる。これ最高じゃないですか。お金もあって、一緒に若く魅力的な男性とイタリアで過ごして、娘もいて、旦那もいる。旦那との子は旦那が面倒をみていてくれる。

こんな不倫がゆるされるのは、やはりキリスト教の精神なのでしょうか。右頬を打たれたら左頬ものゆるしの精神。なんかすごいもの見た…という圧がありました。

アンナ・カレーニナは主に旦那が理解を超えてきたんですが、その後にボヴァリー夫人を読んだら、こちらは登場人物全員に「いやいやいやいや、それはないって」と突っ込まざるを得ない始末。アンナ・カレーニナで首をひねってた私が甘かった。首を振りすぎて飛んでいきそうなくらい、いやいやいやそれはないって。

ボヴァリー夫人は農民の娘なので、アンナとは違ってそもそもの位は高くないのです。だから医師の妻になっただけでも大分良い生活になったはずなのですが、華やかな貴族の生活を夢見て散財します。いやいや、それができる収入じゃないし、そもそも貴族でもなんでもないじゃん。

不倫相手もアンナのような精神的にも深い結びつきの相手に出会ってしまって、というのではなくて、遊びなれたオジサンに騙されただけだし。それにはまっちゃダメだって!適度に遊んでいるうちはオジサンも蝶よ花よとあがめてくれたものの、駆け落ちしたいと言ったら案の定捨てられて、今度は若い書記官と関係を持つのですが、相手の職場にいきなり行くとか、ウザがられそうなことをしちゃうんですよ。ほんとダメ。ダメ女すぎる。

旦那も、お金に関することを奥さんに任せたりするんです。それは絶対ダメな奥さんでしょ。見ててわからないんでしょうか。若くかわいい奥さんだからすべて大目に見てしまうのはわかるけど、お金の決定権はダメでしょ。旦那、奥さんが夜帰ってこなくても何にも疑わないし。いやいや浮気しかないでしょ。旦那は奥さんが何をしていても全く気付かないんです。

書記官は奥さんに本当に惚れていたはずなのに、奥さんが借金にまみれたら逃げ出すし。出てくる人みんなどうしようもなくて、まともな人が一人も出てこない小説がこんなに名作とされるのも珍しいなと思いました。そういうダメさをとことん書いたのが良かったんでしょうか。

ボヴァリー夫人の物語は、恋愛の物語というよりは、おバカだとこうなるっていうダメ物語なのかなとも思えました。恋愛で身を滅ぼしたというよりは、借金で首がまわらなくなって、結果的に自分は死に、旦那は財産すべてがなくなり死に、娘も両親を失って貧乏な人生を送ることになったという、ひどすぎる物語です。これが名作として語り継がれるフランスってやっぱりフランスだなあという他ありません。放埓さに対する憧れみたいなものがあるんでしょうかね。

むかし『チャタレイ夫人の恋人』を読んだときは、こんなに理解不能とは思わず、ふつうに感動したんですが、イギリス的なものは理解できても、ロシアは難しく、さらにフランスとなると理解のはるか上でした。日本の不倫ドラマの『昼顔』は何の疑問もなくハマったので、たかが不倫とはいえ、やはり人間のもつ価値観というのはその国その時代でいろいろ違うんですね。







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