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ジャン=リュック・ナンシーと民主主義

哲学者のジャン=リュック・ナンシーが亡くなったそうです。81歳。

ジャン=リュック・ナンシーの哲学は文化に関するものが多いのですが、私は若いころ、ジャン=リュック・ナンシーの民主主義についての考え方にものすごく影響を受けました。

普通、民主主義の話でお決まりなのは、アリストテレスが「衆愚政治」と位置付けたデモクラシー(大衆の政治)から始まって、かなりざっくり飛びますが冷戦が終わった後の民主主義批判(ポピュリズムとか)だったり。それと近年よく聞く議論は、「選挙や多数決などのシステムのことを民主主義と呼ぶのか、それとも一人一人の意見が反映される政治という意味での民主主義か?」みたいなやつですね。

でもジャン=リュック・ナンシーの民主主義は、こういう議論と全然違うんです。おもしろいし、さすがだなと思いました。今手元に本がないのできちんと引用できないのが残念ですが、こんな感じのことを言っていました。

「声を持たない人が、声を持つようになること。それが民主主義である。あるいは、その過程そのものが。」

フランスの哲学がおもしろいのってこういうところです。伝統的にラディカルで闘争的なんですよね。ジャン=リュック・ナンシーってあまり激しそうなイメージはないし、実際に会ったことはないのですが写真などから、つるっとした穏やかな方っていう印象だったのですが、哲学の内容そのものは尖ってて厳しくて優しい感じがします。

私の好きな偉大な人がまた一人いなくなってしまいました。


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