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初めてちゃんと観るジャッキー・チェン。『プロジェクトA』感想

最近、SASUKE→ジャッキーちゃん→ジャッキー・チェンという少々独特なルートでコンテンツにハマっていって、映画『プロジェクトA』にたどり着いた。

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全く世代ではないので、ジャッキー・チェンという人物は知っているものの、作品は小さな頃に『酔拳』と『ベスト・キッド』を見たような見てないような、という程度の知識レベル。
大人になってから初めてきちんと観るアクション映画だった。

まず驚いたのは、単純に人数の多さ。これだけの役者を集めて指示を出すのも大変だろうし、演者がこれだけいるということはスタッフを入れたらどれだけの人数になってしまうのだろうと想像したら気が遠くなる。

それだけの大人数が揃って同じ動きをしたり、突然全員が乱闘を始めたりするのはやはり見応えがあって面白く、この映画はまず人の動き、アクションを楽しむ映画なのだと伝わってきた。

個人的には作品にはストーリーや構成を期待するタイプなのだが、アクションと演技力だけでも105分間ずっと画面から目が離せなかった、惹きつけられたという意味において、自分の中で稀有な作品と出会えて良かったと思う。

『プロジェクトA』のストーリーは分かりやすい勧善懲悪で、複雑な人間関係や伏線回収を見慣れている近年の感覚からすると展開が若干雑なようにも感じられる。しかし、その分アクションシーンにしっかり時間が割かれており、スタントなし、CGなしで撮っているという前情報もあいまって、どこか格闘技の試合を見るような目線でずっと集中して見てしまっていた。

コマ落としのような技法が使われていることを差し引いても、実際にあの動きをしていたのが信じられない。特に自転車に乗ったまま敵を倒したり障害物を超えたりするシーンは気に入って何度もリプレイしてしまった。

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一方で、スポーツを観戦する感覚と明らかに違うのは、自分でも動きができそう、真似したいといった気持ちにさせられるところだった。あからさまな武器でなく周辺の道具を使って戦うという手法と主人公の時にコミカルなキャラクターが、「何となく真似したい」という感情を引き起こすことも人気の理由の1つなのだろう。また、熱い演説からおどける動作まで振り幅が広い緩急のある演技は見ていて飽きず、映画版クレヨンしんちゃんのシリアスなシーンでつい感動してしまうことを彷彿とさせた。

全体として細部までよく作り込まれた映画という印象を受けたが、特にカメラワークと衣装について触れておきたい。

カメラワークについては動きを中心に見せるためか表情などのアップは少なく、俯瞰で撮っているシーンが多かった。その分どこを見れば分からない場面も多少あったものの、そのゴタゴタ感は新鮮で見ていて面白かった。

また、衣装に関して、前半の海上警察と陸上警察が乱闘になる場面では衣装がほぼ2種類しかなく主人公がどこにいるか分かりづらいなと思っていたが、クライマックスでは主人公が変装して敵のアジトに潜入するという設定を生かして一人だけ華のある紳士のような衣装になっていて、戦う姿がとてもカッコ良く、きっとそこまで考えて脚本が作られているのだろうと感心させられた。

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今まであまりこの時代の映画やカンフー映画を見たことがなく、観る前はもっと汚く泥臭い作品かと思っていた。しかし、イギリスの影響を大きく受けた時代背景もあってかお洒落で華やかなシーンも多くあり、2020年になっても十分ジャッキー・チェンは正統派に格好良く、アクションも見ていて予想外に楽しかった。名作はいつまでも名作なのだと感じ、他のジャッキー映画を観てみたくなるような期待の持てる、楽しい作品だった。


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