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戦略的と盲目的

デンマーク留学で改めて知ったことに「ストラテジー」がある。ストラテジーとは「戦略」という意味だ。日本にいるときでも特に仕事でよく使っていた言葉であり、意味合いも十分に理解していると思っていた。デンマークに行ったからと言って劇的にそれが変化したわけではない。しかし、その言葉を人生に適用しようとするときに感じていた違和感がきれいになくなっていたという感覚が新鮮に思えたのだ.「戦略」を英語やデンマーク語に直した途端にニュアンスが変わってしまうのかもしれない。「戦略」というと、戦いに勝利するための手法、道筋であって、論理的・言語的なイメージを抱いてしまう。それはまさにゲームの世界であり、勝負に関係している。したがって人生という、勝負ではない、個人的・精神的で言語化していない範疇に戦略を用いるのはとても抵抗があったのである。それほど人生はカオスだと思っていた。
ところが、デンマークのフォルケホイスコーレでは「自分をよく観察し、コントロールする」ことを教えていた。また、人生の幸福とは意味のある人生を送っているということであり、その基本は自分の人生に責任を負う機会を与えられているということだと繰り返し述べられていた(自治体のウェブページ)。なかなかそしゃくして自分のものにするにはむずかしいが、とりあえずは言語的に明確になっていたのである。明確な目標が得られれば、それを達成するのに「戦略」は必然だ。まあ具体的に戦略として意識するのはしかし、小さなことではあったが。例えば、面白い本を読みかけているのだが、明日は早起きして大事な会議に出るとする。もちろん、夜更かしするようなことはしない。ただ気持ちとして、これまでは「本を読みたいけれど、会議があるから仕方ない、早く寝よう」という我慢の意識であった。我慢というのは目的なく自分を抑えることだ。だから寝床に入ってもなんだかつまらない。会議のことを考えたり、本のことを考えたりしながらしばらくゴロゴロするわけだ。これがデンマークからの帰国後は多少変わった。面白い本を読む時間は作ることができる。大事な会議にはベストコンディションで臨みたい。それには○○時に寝て、必要な睡眠時間をとり・・・という「戦略」になってきたのである。本を読むのを我慢するのではない、自分の意志で別の時間に割り当てるのである。自分が一番良いパフォーマンスを出せる条件を考えて、そのために休みを取り、時間を切って集中し、そしてまた休む。そのように自分をコントロールすることはまさに「戦略」だと気づいたのだ。
私が就職して暫くの間は世間は「24時間戦えますか」という勢いであったので、全力で疲れ果てるまで突き進むことが普通であり、そのように生活も作ってきてしまっていた。制御がなかったのだ。私はデンマークでそれを教わり、それが幸福への道であるというモデルも知ることができた。戦略的というのは勝負に勝つために知恵を巡らせることだが、自分の最高を導くという勝負に勝利するために考えることも戦略になるのだなと、思ったのだった。

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