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2ヶ月目の日曜日

10月20日は日曜日だった。デンマークにきてからちょうど2ヶ月がたった頃だった。ようやく生活習慣も出来上がり、体も健康を取り戻し、そして好奇心に任せて出歩くようになった頃だ。日本にいるときは近くであっても車を使うことが多く、自分の足で歩くということが少なかった。それにデンマークにきた途端に発症した足首の神経痛はフォルケホイスコーレの校舎の中を移動するにも不便なほどのものだった。おかげで2、3km歩くだけで足がつるほどの状態がしばらくあり、すっかり歩くことに自信をなくしていたわけだ。それでも街の中の公園をぐるっと1km、近くの教会まで3km、そして森を抜けて海岸まで5kmと徐々に距離を伸ばしていき、この頃には歩くことへの不安はほぼ無くなっていた。
フォルケホイスコーレは土日は授業がないので、朝食と昼食を合わせてブランチとして11時過ぎに食事が提供される。あまり遅くまで寝ていることもできなかったので(年齢のせい?)、いつものように6時に起きるのだが、11時までには時間がある。当然お腹が空くので、スーパーで買っておいたパンを口に放り込んで洗濯をして、今日一日のスケジュールを考える。ここでも今思えば日本とはだいぶ異なる時間の使い方をしていた。日本では休みの日になにかしようと思うと、時間を決めて予約したり、営業時間を調べたりしてそれまでにあれやこれややることが多かったのだが、デンマークでは違った。朝起きてから「さて、今日はなにをしよう?」と考えていたのだ。つまり予約を取らなくても、営業時間を知らなくてもやれることがいくらでもあったということだ。それはどんなことだったのだろうか。「探検」である。街の中央通りを歩いてみる。おそらくなんの変哲もない床屋がある。その看板をまじまじと眺めて読めないデンマーク語に感心するのである。フォルケホイスコーレは高台の中腹にあったので、そのてっぺんまで登ってみる。眺めのいいところに広めの庭がある分譲住宅地が整備されている。へえ家にはカーテンがないんだなどと、妙なところに感心する。
こういうところを探検するときには一番ワクワクするのが「出会い」である。だれかとすれ違う時は必ず「ハイ」と挨拶する。おもしろいのは、語尾を上げることだ。日本で語尾を上げて「ハイ?」というとなんだかケンカを売っているように聞こえるが、こちらでは普通の挨拶だ。そんなことだけでもおもしろい、刺激的だ。また、その辺に咲いている雑草の花でもなんだか珍しく感じてスマホで写真を撮る。おそらく全く平凡な風景なのに新鮮味100%ということである。日常にこのような探検があることに気づかせてくれたことは今、日本での過ごし方にも少なからず影響を及ぼしているようだ。

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