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㉓とにかく孫の口に食べ物を突っ込みたい義母との抗争 その2

娘をベビーチェアに座らせて離乳食を食べさせようとすると、義母がやってきて、
「私がやる!」
と宣言する。気が進まない私は、
「いえ、私がやります」
と言うのだが、義母は聞き入れず皿とスプーンを私の手から奪う。心配で横で見ていると、義母は食べさせるスピードが早い。娘が飲み込む前に、次々にスプーンでお粥を口に入れていく。
「ゆっくり食べさせてください。一さじ口に入れたら、噛んで全部飲み込んでから、次をやってください」
そう言っても、例の「だーいじょうぶ(ケンチャナー)」の一言で済まされる。じりじりしながら横に立って見ていると、
「あっちで自分の仕事をやって」
と追い払われた。
はい全部食べた、という言葉を合図にそちらに戻る。空の皿を義母がぽいと寄越してきたその時、娘はベビーチェアのテーブルの上に離乳食を吐いた。
悪い予感が当たった。だから言わんこっちゃないんだ。そう思った時、義母が言った言葉で怒りが3倍増しになった。
「野菜の切り方が大きかったからだ」
それ以降、義母に離乳食は渡さなかった。いない時を見計らって食べさせるか、義母が皿をつかんできても頑として手を離さなかった。
ところが、義母の誕生日に祝いの会があり、外食の席で、自分の膝の上に孫を座らせようとする義母に逆らえず、娘を託すことになった。案の定、テーブルの上の物を次々に与えていく。
「もうご飯を食べてきたので…」
やんわりと言っても、
「なんで(食べてくるんだ)!」
「これ以上はやらないでください、吐きます」
「だーいじょうぶ」
と、例の如き会話。どう見ても、1歳の子に食べさせていい量ではない。そこからさらに、デザートとして出された水っぽいスイカを、何切れもやり始めた。
「お義母さん、もうやめてください、吐きます」
聞こうとしないので、私はスイカの皿を義母の手の届かない所に下げようとした。その瞬間、義母の手が目にも止まらぬ速さで動いた。私が引こうとしている皿の上から、さらなる一切れを引ったくったのである。「70のお婆さん」である義母の、その素早さに瞠目する。
それは娘の口に突きつけられ、娘はしゃくしゃくと噛んで食べていった。食べ終わった後、娘はテーブルの上に吐いた。
この時の義母の言葉は、
「急いで食べたからだ」
であった。
「急ぎすぎたねー」
と娘に向かって言う。
人間というよりむしろ、ヒョウかピューマに近い存在だとつくづく思った。
娘が吐いたのは、後にも先にもこの2回だけである。

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