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私はきっと、悪い先生なんだろう

授業をしていると、心が荒んでいくのを感じてしまう時がある。

別に生徒が難しい問題を解いていて、私がそれに上手く答えられないとか、そういうときではない。真面目な生徒は大抵、先生がポンコツで使い物にならないと思ったら最後、すぐに違う手段に移ってくれる。そこは残酷なほど、正直でいてくれる。そしてそういう態度は、私のもっと向上しなければ、という熱意をくすぐってくれる。

私の心が荒むのは、むしろその逆だ。
生徒が、何もしてくれない時。

何もしないというのは、ちょっと違うかもしれない。
彼らは何かはしている。隣近所の友達とおしゃべりをする。ノートの切れ端を使って、手紙を書いたりする。注意をしても止まらない。単語テストをするよと声かけをしてから、単語の勉強を始める子もいる。まあそれはいい。やらないよりはマシ。やらない子は、シャーペンの分解を始める。バラバラにして、組み立て直して、またバラバラにする。大抵、その時に中のバネをなくす。

私は、何をしにここへ来ているんだろうなぁ、と、心が冷たくなる。
私は熱血タイプの先生ではないので、しっかりしろ!そんなんでいいと思っているのか!もっと気合い入れて勉強しろ!と声をかけたりはしない。放っておいて、まだ頑張っている生徒を優先しながらエンジンがかかるのを待ったりする。大抵、声をかけたところで鬱陶しそうな顔をされるから。

でもこういう子に限って、面談なんかで親や塾長の前では「だって先生が何も教えてくれないんだもん」とか言ったりする。そうだね。学ばないのなら、教えても意味がないと、私は思ってしまうから。そこは同意するよ。

ガックリきたのは、やはり単語テスト。
「わからない」と生徒が言うのだ。そりゃあ、勉強してこなければわからないだろうよ。だから、しっかり暗記する時間を取るよう指導する。発音を学ぶと覚えやすくなるとか、思い出しやすいよう知識の紐付けとか、そんな手伝いは授業では行っているものの、微力だ。時間がないと、言い訳ランキング1位の言葉もよく聞くので、5分だけガッツリやれば効果が出る、と説くこともある。それでも、やらない子はやらない。そして「わからない」と宣う。

私も、君がわからないよ。
とどのつまり「私は単語の勉強を一切してこなかったし、したくないからずっと「わからない」と言い続けます。」と言っているのだ。それを先生に言って、どうしようと思っているんだろう。先生、私に単語テストなんて無駄だから、実施しないで。という訴えなんだろうか。別にやめてもいいが、その後のテキストで問題が解けず、苦しむことになるのは君だし、テストの点数が伸び悩んで、夏期講習なんかでコマ数を増やされて、もっと嫌な思いをするのは君だけど。

君は、それでいいのかい。

こういうことを真面目に聞こうとすると、大抵「もういいって」と言われる。先生、面倒くさいよ。ハイハイ、結局勉強しろって言いたいんでしょ。と言わんばかりの態度で。それでいいし!と開き直る子は、多分喧嘩する相手を間違えている。塾に来たくなければ、塾代を支払う保護者と是非やってくれ。

私は、先生としての仕事がしたい。
頑張りたいけど、頑張り方がわからないだとか、勉強について悩む子の手伝いがしたい。今担当する生徒たちを見ながら、そう願う私はきっと、悪い先生なんだろう。

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