「ゴスペル日記8」~初コンサート~

ゴスペル日記8 ~初コンサート~


そして先生は聞いていた、一人ひとりの声を。

当然、私の声も聞いてくれていた。

ハロウィンも終わり、アメリカ生活も2ヶ月が過ぎようとしていた11月のある日、
12月にクリスマスコンサートをやるという。(実際はもっとは早くから言われていたのだろうが言葉が理解できていなかった)

当然、
自分はそのときはモグりだったのでコンサート当日は観客席でみんなを応援しようと思っていたが、、

そのとき、おもむろに先生が私をみんなの前に呼んだ。

そして、

「この曲を歌いなさい」

といって、
私の目の前で歌いだした。

「The First Noel」

クリスマスコンサートに向けて私にソロの曲をくれたのだ。

正直ビックリした。

どこの馬の骨とも知らぬヘンなモグりの外国人の私にコンサートでソロをとらせてくれるというのだ。

日本の感覚ではまず考えられない。

アメリカの懐の深さというかアバウトさというか、仲間に対する温かさを感じた日であった。

それからというもの練習はチョーー本気だった。

とにかく狂ったように歌いに歌いまくった。

それまでの自分では考えられないが、一日でどんなに最低でも5~6時間、多いときは10時間以上にも自己練習は及んだ。

気が付くと酸欠でぶっ倒れてるときもしょっちゅうだった。

ボイストレーニングの一環で始めた腹筋50回も次第に増えていき、最終的には毎日500回、気が付くとその後も3年間くらいやっていた。(実際はそんなやる必要はありません(笑) むやみにやると腰を痛めます)

今までの人生の中でも最高に集中したときだったかも知れない。

そして迎えたクリスマスコンサート(1997年)当日、みんなで全力で歌った。

自分は自分で300人の観客を前に、ソロの曲の直前まで緊張でガチガチだった。

「口から心臓が出そう」という表現はこれだなと。。

しかし不思議なことにその前奏が流れた瞬間、フッとそのカタさが消えた(ついでに歌詞も軽く消えた笑)

そして、なぜか何も緊張しなくなってしまった。

今にして想えば極度の緊張でイってしまったのだと思う。

曲が終わった瞬間、ワリとしっかり歌えた・・・ような気がした。

するとそれを認めてくれるかのように、客席から聞こえる割れんばかりの拍手。

スタンディングオベイションを受けたのは初めてだった。

しばし何が起きたのか認識できず、ただ呆然としていたところへ先生が歩み寄ってハグしてくれた。

その瞬間、OKだったのね?と気がついた。
 
初の渡米から帰国する2日前のことだった。・・・つづく


2006年02月17日に書いたもの

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