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『母について』その2
惨劇の発表会の翌日、
母「で、どうするの?バイオリン」
(え?もう?早くない?)
本音を言うと少し休みたかったのです。今思うとそんな一度の失敗で、と思うのですがまだ14歳、失敗の経験がなかったのです。
少し休みたいと言えなかった。白か黒か。 all-or-nothing それしか許されないと何故か思い込んでいたのです。
私「・・・・・・やめる」
母「・・・わかった」 ドーーーーーーーーーンッ
恐ろしい決断をしてしまったのではないか。 必ず後悔する。わかっているのにどうして?
私は谷底で震えていました。自ら進んで谷に落ちたようなものです。その事に軽いパニック状態だったのだと思います。
その翌日、学校から帰ると家の中の様子が少し違うのです。(なんだろ?)ゆっくりと視線を巡らせ考えました。
はっ!ないっ!バイオリンがない!! バイオリンだけじゃない、バイオリンにまつわるレコード、カセット、ビデオ、本、ありとあらゆる物が消え去っていたのです。
私「お、お母さん、バ、バイオリンは?」
母「やりたいっいう子にあげたよ。」
私「ど、どうして?」
母「あなた、やめるんでしょ。」
泣くことしかできませんでした。
私はライオンじゃない。私はライオンじゃない。私はライオンじゃない。私はライオンじゃない‼️
この出来事は私の人生において初めての大きな試練でした。
その後5年程、私はバイオリンの音が聴けなくなりました。聴くと涙が出るのです。胸が苦しく息ができなくなるのです。
きっと母は「続ける」と言って欲しかったのでしょう。「もう一度チャンスを下さい。バイオリンをもう一度買って下さい」そう言えば買ってくれたように思います。
甘ったれでやる気を出さず泣いてばかりいる私に愛想が尽きたのでしょう。
〜獅子は我が子を千尋の谷に落とす〜
つづく…
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