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映画『シン・ウルトラマン』

※2022年6月19日にCharlieInTheFogで公開した記事(元リンク)を転載したものです。


 ウルトラマンマニアにはいろいろと元ネタオマージュがふんだんに盛り込まれていて楽しめたようだが、私はマニアではないのでいまいちだった。

 〈官僚や科学者は国のことを真剣に考えているが、政治家は私利私欲のために動く〉という思想が、シン・ゴジラより強まっている。

 シン・ゴジラが描くのは、誰がどう見ても国家の存亡が問われる緊急事態であり、なりふり構っていられない状況である。その中で一応は民主的な正統性をぎりぎり保てる体制として戦っていく姿が見えた。

 今回のシン・ウルトラマンで、政治はかなり裏に下がる。とは言え、官僚や科学者たちが活躍するかというとそうでもない。解決していくのはウルトラマンである。官僚や科学者たちは、ウルトラマンが人類のためにあの手この手で戦おうとする意思の源泉として登場するのみである。つまり〈私たちを救ってくれるウルトラマン〉の〈私たち〉には観客も含まれるはずだが、その観客は、官僚や科学者たちに〈私たち〉を仮託して見ることを製作者側から強いられる。

 とにかく製作者側の官僚、公安、自衛隊といったものへの信頼が謎に強すぎる。こういった思想と超然主義、革新官僚、皇道派といった反政党の政治思想とは何が違うのだろうか。

 また、ウルトラマンはなぜあの手この手で人類のために戦ってくれるのか。その意味が物語上、とても重要であるはずなのに、何ら説得的な描き方がない。

 今回はそういう難しいことはとにかく外したい、つべこべいわずウルトラマンをやりたいという、子供っぽさしか感じなかった。個別のキャラクターには味があるだけに(山本耕史演じるメフィラスはあまりに素晴らしい)、残念だ。

(樋口真嗣監督、2022年)=2022年5月13日、TOHOシネマズ梅田本館で鑑賞。


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