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ウイスキーづくりと『女性』

■前回まで

ビールや、日本酒、そしてミード(はちみつ酒)が、
・元々は「女性がそのつくり手」だった。
・産業化によって一旦は男性社会になるも、
・最近は再び女性のつくり手が増えている!

ということをご紹介しました。

それでは、ウイスキー業界はどうでしょうか?


■アイルランドの場合

「ウイスキー発祥の地」と、私が考えているアイルランドについて確認してみたいと思います。

ウイスキー/アイルランド起源説 まとめ 《歴史の授業⑧:最終回》|チャーリー / ウイスキー日記 (note.com)

アイルランドではウイスキーが一般化する前、元々はポチーンという蒸溜酒が飲まれていました。
簡単にいうと、「木樽熟成をさせていないウイスキー的なもの」です。

ポチーンも、ビールや日本酒と同様に「身内で飲む」ような時には、昔の日本の「どぶろく」のように家庭で女性がつくっていたようです。

女たちは山中でポティンを造り、それを結婚式や葬式、通夜や祭りでこっそりと楽しんだ。

ウイスキーウーマン P34 フレッド・ミニック著
明石書店

ただポチーンについては自家製造の密造酒のため、あまり文献や記録がありません。

一方で「記録の残っている正規のウイスキー業者」では、男性がほとんどでした。


■スコットランドの場合

スコットランドでもアイルランドと同様に、古い時代の「記録の残っている正規のウイスキー業者」は、ほぼ男性でした。

個人名としてスコッチウイスキー史の初期に登場する女性は、世界で一番売れているウイスキー「ジョニー・ウォーカー」のキーモルトをつくっているカードゥ蒸溜所の創業者ジョン・カミングの妻ヘレンです。

妻のヘレンは近所でも評判の「肝っ玉母さん」で、査察団の巡回のたびに仲間にその来訪を知らせるなど、女傑ぶりを発揮した。

ウイスキーコニサー資格認定試験教本2020中巻
P49 ウイスキー文化研究所

これは1824年にスコッチウイスキーの法律が変わり、正規の蒸溜所が一気に増える少し前の時代の話です。

ただ、この場合はヘレンさんが「ウイスキーづくりをしていた」というよりも、「機転の早い奥さんだった」という話なので、「女性経営者/女性のつくり手」というわけではありません。

逆に1824年の法律改正以降に密造蒸溜所が減り、正規蒸溜所が増えると、男性経営者の未亡人が蒸溜所のオーナーに就くということが、わりとあったそうです。

大半の女性たちは、夫を亡くしたあと合法的に蒸留所を引き継ぎ、経営者となった。
 (中略)
ハイランド地方は、砂岩が隆起した北部から西部のふもとまでの地域だが、そこでは1800年代、複数の女性たちが遺贈を受けて蒸留所を経営していた。ダルモア、グレンタラット、オード、それにストロムネスといった蒸留所は1800年代、すべて女性によって操業されていた。

ウイスキーウーマン P65 フレッド・ミニック著
明石書店

しかしこの時代、「女性経営者がウイスキー蒸溜所経営で辣腕を振るった」という情報は、ちょっと調べる限りでは、なかなか見当たりません。

複数の女性経営者がいたわけなので、多分、そういう方もいたとは思うのですが・・・


■女性の名経営者

詳細な記録の残っている20世紀以降で、男性社会だったスコッチウイスキー業界で活躍した女性経営者としては、ラフロイグ蒸溜所を率いたベッシー・ウィリアムソンさんが有名です。

1934年に旅行でアイラ島に来て、たまたまラフロイグ蒸溜所のタイピストの求人を見かけて、アルバイト感覚で応募。

その才能を見出され正社員として採用されると、第二次大戦前には正式にラフロイグ蒸溜所の経営を任されます。

ラフロイグ蒸溜所では、前述のダルモアなどのように遺贈によって女性がトップを務めた時期がありますが、ベッシーさんの場合、その経営手腕や人柄が抜きん出ていました。

簡単にいうと、ベッシーさんは

経営もバチッリ! & 
スタッフみんなから好かれていた

わけです。

第二次大戦で男性が戦地に召集される中、ラフロイグ蒸溜所を守り抜き、蒸溜所のスタッフのみならず、アイラ島民からも愛された存在でした。
(ベッシーさんについては、また別途で記事化したいと思います。)

この当時、ベッシーさんがスコットランドの蒸溜会社で唯一の女性経営者でした。

スタッフのほとんどが男性。
(一番右側の女性が
ベッシー・ウィリアムソンさんだそうです)
※ 下記の稲富博士のスコッチノートから転載

稲富博士のスコッチノート 第123章 アイラ島蒸溜所総巡り−7.ラフロイグ蒸溜所 (ballantines.ne.jp)


■そして現在

ウイスキー業界でも、ビールや日本酒、ワイン業界と同様に、女性の活躍が著しいです!

次回へ続きます!

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