スコッチ/シングルモルト人気の立役者『クラシックモルト:6種』 《スコッチ・トレンド史⑥》
■スコッチウイスキー人気の浮き沈みの歴史
引き続き、大きな周期で繰り返すスコッチウイスキーのトレンドについてご紹介します。
ただし、1960年代にはじまった『シングルモルト』が、「静かなブーム」とはなるものの、すぐに「バズった」わけではありません。
今回は、消費者に対して『シングルモルトの魅力』を上手に情報発信した、こちらの事例をご紹介してみたいと思います!
■UD社:クラシックモルト・シリーズ
この「クラシクモルト」というフレーズを知っている方は、相当なウイスキー通かと思います!
一般的に、このクラシックモルト・シリーズの発売が、「シングルモルトというウイスキーのスタイル」を、世界に大きく認知させた契機になったと言われています。
それまでも、グレンフィディックにはじまり、いくつかの蒸溜所がシングルモルトを発売していました。
ただ、このクラシックモルトがそれまでのものと異なる点は、
的な発売だったことです!!
■そもそもUD社とは?
今の世界No.1スピリッツメーカーであるディアジオ社の前身の会社です。
1877年にローランド地方のグレーンウイスキー業者6社が集まって、DCL社(ディスティライー・カンパニー・リミテッド社)が誕生。
その後、スコッチウイスキー業界で1位の会社へ躍り出ます。
ただ、DCL社は1986~87年にかけて、アイルランドの黒ビールで有名なギネス社に買収されます。
ギネス社は酒類の多角化のため、すでにスコッチ蒸溜所をいくつか持っていたので、それらとDCL社傘下の蒸溜所をまとめて、ギネス社傘下のUD社(ユナイテッド・ディスティラーズ社)へと集約します。
その後、ギネス社とグランドメトロポリタン社(英国の複合企業:酒類の製造販売から、食品の製造販売、そして全世界でホテルやレストランも経営)が、1997年に合併して、今のディアジオ社が誕生しました。
クラシックモルトを発売したのは、ギネス社傘下のUD社時代の1988年のことです。
■クラシックモルト6種の中身は?
クラシックモルトは、
「スコッチのシングルモルト=6種類の飲み比べセット」
とお伝えしましたが、その中身を具体的に見てみたいと思います。
居酒屋などではあまり馴染みのない銘柄もあると思いますが、オーセンティックBARには必ずと言って良いほど置いてある、ど定番&高品質なシングルモルト・ウイスキーです。
そしてここで、スコッチウイスキーに詳しい方なら、パッと見でわかりますよね?
スコッチの生産地は、現在は6つの地区に分けて分類することが一般的なのですが、このクラシックモルト6種類は、見事にそれに当てはまっているのです!
(キャンペルタウンだけは、UD社の蒸溜所がなかったので、キャンベルタウンにかなり近い西ハイランドのオーバンが選ばれています。
ちなみにこのオーバンも、勇逸に美味しいモルトウイスキーです。)
■クラシックモルト発売の意義
シングルモルトは、その地域の気候風土を表現している地酒です。
そしてその地酒の味わいは、他と比較することで、よりその「特徴」を感じることができるのだと思います。
スコッチの6大生産地ごとに、その「土地特有の味わい」にフォーカスを当てるという手法で発売されたクラシックモルト・シリーズ。
それまで「キワモノ」的な商品だったシングルモルト・ウイスキーを、スコットランドの『真の地酒』へステージアップさせるキッカケになったのではないでしょうか?
■クラシックモルト発売が与えた歴史的インパクト
そもそも、6生産地区分は法律などで定められているわけではなくて、慣習的に使われている分類です。
この6つの中で、区分としての歴史が一番浅いのは「アイランズ」で、1990年~2000年頃から6つ目の生産地区分として、新たに分類されるようになりました。
ということは、6生産地区分が一般的に使われるようになった時期(1990年代)より、クラシックモルト6種の発売(1988年)の方が早いです。
むしろ、このクラシックモルトの発売によって、アイランズという生産地区分が新たに一般的に使われるようになったのではないでしょうか?
そういう意味でも、このUD社のクラシックモルト6種の果たした役割は、非常に大きかったと思います。
■次回へ続きます!
他にも「シングルモルト」の可能性を信じ、上手に情報発信をした事例があります!
次回へ続きます。
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