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一升瓶ウイスキーの終焉。その2つの理由。《一升瓶ウイスキー⑥》

■前回までのおさらい

◇昭和の地ウイスキー=一升瓶ウイスキー 
 が誕生した背景

①1973年をピークに日本酒が売れなくなってしまったから、日本酒の酒蔵がウイスキー製造に参入した。
(第二次大戦後、日本酒には醸造用アルコールを添加することが一般的になっていたので、酒蔵にとって、スピリッツの取り扱いはお手のものだった)

②既存の一升瓶のボトリング設備を活用したので、「一升瓶入ったウイスキー」という特殊な形態のウイスキーが誕生した。

③一升瓶ウイスキーのスペックはそのほとんどが、少量のウイスキー原酒と、多くのスピリッツをブレンドした二級ウイスキーだった。ウイスキー原酒には、当時スコッチが不況だったのでスコッチのモルト原酒を輸入して使用することも多かった。

④一升瓶ウイスキーの基本戦略は、低税率の二級ウイスキーによる『低価格戦略』だった。

この一升瓶ウイスキーの栄華も、長いことは続きませんでした。


■なぜ一升瓶ウイスキーは、最近見かけないのか?

《答え》
日本酒の酒蔵が、一升瓶ウイスキーの生産をやめてしまったから。

Q)なぜ酒蔵は一升瓶ウイスキーの生産を止めてしまったのか?

《答え》

①    昭和のウイスキーブームが去ってしまったから。

②    二級ウイスキーという低価格戦略を使えなくなってしまったから。

1つめの理由のウイスキーブームが去ってしまった理由の詳細については、超長くなるのでまたいつか別途で記事化しますが、簡単に解説をさせてください。


■一升瓶ウイスキーの消滅の理由①『ウイスキーブームの終焉』

1983年に過去最高の出荷を記録したウイスキー市場は、2008年に角ジョッキのプロモーションで角ハイボールからのウイスキー市場の復活があるまで、25年間の超ダウントレンドに陥ります。

ウイスキー文化研究所/ジャパニーズウイスキーインフォメーションセンター内より引用

JWIC-ジャパニーズウイスキーインフォメーションセンター|JW物語

上記は国税庁が発表しているデータを、JWICさんがまとめてくれた資料ですが、昔のデータは、ブランデーとウイスキーが合算されていました。
ブランデーがウイスキーと分けられたのは2006年度からなので、ピークの1983年のウイキーの数量は概算で35万キロリットルくらいということになるそうです。(※上記、JWICのサイト内に説明あり)

◇日本のウイスキー課税数量
・1983年 約35万キロリットル

・2007年 約6万キロリットル
               (1983年比 約17%)

25年間、落ちに落ちて、ざっくり1/5まで落ち込んでしまったわけです。
普通は会社が潰れますね、このレベルは。

日本酒の酒蔵が一升瓶ウイスキーづくりに参入した理由が、1973年をピークに日本酒がダウントレンドになり、その時に着目したのが「超右肩上がりだったウイスキー」だったからです。
そのウイスキーがダウントレンドになれば、ウイスキーでない違う分野へ事業領域を変更していくのは当然の流れです。

しかし、このウイスキーのダウントレンドというのは、酒蔵が一升瓶ウイスキーの生産をやめた長期視点での理由の1つではありますが、短期的な理由ではありません。

直接的な短期視点での理由は2つ目です。


■一升瓶ウイスキーの消滅の理由②『二級ウイスキーが無くなったから』

どういうことかというと、1989年の酒税法の改正があり、戦前から続いていた3ランクのウイスキーの等級制度(1989年時点では特級・1級・2級)が無くなってしまったのです!

これは今のビール・発泡酒・新ジャンル(第三のビール)と同じように、ウイスキーもその等級によって税率(国に納める酒税)が異なっていました。

《特級ウイスキー》
 酒税が高い = 販売価格も高い

《二級ウイスキー》
 酒税が安い = 販売価格も安い

※ 「従課税」という考え方

日本の酒税法では、

品質の高い(=価格の高い)お酒を飲む人は、
お金持ちなので、
より多くの税金を払ってもらってOK!

という基本的な考えがあったので、このような税の仕組みとなっています。
(他国では「アルコール度数に応じて」など、そもそもの課税の考え方が異なっていることも多いです。)

それが、1980年代後半に日本が高度経済成長を経て、貿易摩擦が深刻化すると、諸外国(特に英国のサッチャー首相)に、このウイスキーの酒税について、ムチャクチャ突っ込まれます。
正確にはGATT(関税及び貿易に関する一般協定)の評議会に提訴されてしまいます。


■GATTで訴えられた日本のウイスキー

《英国首相サッチャーさん側の意見》

日本のウイスキーの税率って、おかしくない?

うちらのスコッチ・ウイスキーは、スピリッツを入れたりすることないから、日本へ輸出したら、全部、特級ウイスキーなんですけど!

庶民向けの安いスコッチから、プレミアム・スコッチまで、ぜーんぶが特級ウイスキー扱いで、高い関税を掛けられたら、そりゃ売れませんよ。

そもそもウイスキーの等級制度って日本しかやってないし、その変な等級制度とかいうの、やめなさいよー!! 怒

世界で売れているスコッチ・ウイスキーが、日本で売れないのは「酒税の仕組みのせいだ!」と訴えられたのです。

この貿易交渉の結果、1989年にウイスキーの等級制度はなくなり、それにともない従価税の制度もなくなり、ウイスキーは1つの税率になったのです。


■1989年の酒税改正がもたらせたもの

次回に詳しく説明したいと思います!

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