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手紙を通して、直接伝えたいこと。

 最近たまに色々な場面で目にする『ステートメント』という言葉。いったいどういうものなのか、そのままにしていましたが、この本を通して向き合ってみることにしました。冒頭で岡本欣也さんは、『方針』『約束』『声明』『宣言』これらを手紙のようにして伝えることと、まとめています。広告コピーでいえば、キャッチコピーではなく、ボディコピーの一種。しかもほとんどの場合は300文字程度の文章だそうです。ステートメントと呼ばれる文章は、どのようなものが、受け入れられ、求められるのでしょうか。

 宣伝会議さんのコピーライター養成講座の課題も多くは短いコピーである、『キャッチコピー』が中心でした。そんな中でもいくつかはボディコピーが課題として出されることもありましたが多かったように思います。講師として登場されるコピーライターの方も、ボディコピーを書く機会は少なくなっているということを、どなたも仰っていました。逆に世の中で求められるのは、ステートメントと呼ばれるようなボディコピーのようです。

 広告コピーでも、どんなメディアを使うかという選定も大きく変わってきている昨今。この本の中で岡本さんも書いていらっしゃいましたが、SNSなども含めれば、誰もが好きなタイミングで好きなように文章を書いて発信することが可能になっていて、文章もあふれるような状態になっています。そのような中でキャッチコピーで立ち止まった人に、一番伝えたいことを伝えるのが、ステートメントなのだと思います。

 立ち止まってもらうまでのキャッチコピーのような言葉は、様々なスタイルがありますが、インパクトがあったり、何か引っかかったりするような言葉のものが多いのではないかと思います。キャッチコピーで立ち止まってもらって初めて読んでもらえるのが、ボディコピーでもあるステートメント。本の中で、岡本さんが事例として挙げているステートメントなどの文章はどれも、心に響くものがあるように感じました。これらがなぜ、心に響くのか。この本の言葉をかりれば、「組織の人の文章」なのか、「ひとりの人の文章」なのかという、スタンスの違いであるということを学びました。

 広告というと、一度にたくさんの人に訴えかけるものだと感じますが、昨年の講座の受講などを通して、個人的に少し世の中が変わってきているように感じています。広告ですら、1人で見ることが多い、つまり見ることを決めたら1対1のメッセージに変わるのではないかと思っています。そんな状態で伝わる言葉は、硬い文章でも、格好をつけた文章でもなく、手紙のような文章。それを300文字程度で短く、しっかりと伝えていくことが、このステートメントの役割なのでしょう。

 もちろん、企業であれば最終的に『商品やサービスを売りたい』ということに行きつくわけですが、『何のために』という理由、『存在理由』がより重要になっているのだと思います。そうやって考えてみると、岡本さんのおっしゃるように、手紙のように思いを伝える手法というのが、より重要になっているのだと感じます。

 またゆっくり、この本を味わいながら考える時間を持ちたいと思う、そんな素敵な1冊でした。

岡本 欣也 著

ステートメント宣言。 株式会社宣伝会議発行 を読んでの感想

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