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大企業でイノベーションを推進する方法(その4)

ここまで、大企業でイノベーションを推進する上で、重要な考え方や方法論について解説してきた。今回は、イノベーションの源泉となる、「アイデア」の作り方、「発想法」について纏めてみた。

1. 前回のおさらい

イノベーションの目的は、革新的なものを作ることではなく、「課題を解決すること」である。そのために、「課題」は何かを最初に考えることが大事。取り組むべき「課題」が見つかったら、「解決策」を考える。但し、時間軸を意識して、社内向けのイノベーションであれば、半年間でローンチできるようなものに絞ることがお勧め。

イノベーションの目的は、「課題を解決すること」

取り組むべき「課題」が決まったら、どのように「解決策」を考えたらよいのだろうか。「エンジニア」と「デザイナー」を入れて議論すべき。解決策を作るということは、何かしらの新しいシステムやモノを作らなければならない。つまり、モノづくりのプロとUI/UXのプロの知見がどうしても必要になるのだ。

解決策は、「エンジニア」と「デザイナー」を入れて考える

2. アイデアの発想法

「解決策」はどのように考えだしたらよいのだろうか。アイデアというのはどこから出てくるのだろうか。頭を抱えてしまう人は多い。特に大企業で働く人は、新しいアイデアを求められることは少ない。それは、当然のこと。大企業で求められるのは、「決まったことを実行に移せる能力」(executionの能力)なので、新しいことを考える能力は求められてこなかったし、当然そういった能力を開発するような人材育成もしていない。ではどうするか。イノベーションを推進するためには、これまで不要だった能力を開発するしかない。つまり、アイデアを発想する方法論を学ぶしかない。

大企業の人材は、アイデアを発想する能力を鍛えるべし

以前、デザイン思考に関する授業に参加して、目からウロコが落ちるような経験をした。それは、課題に対する質問次第で発想が変わるということである。まず、一枚の紙とペンを用意する。最初の課題は、「新しい花瓶をデザインしてください」というもの。みんなそれぞれに花瓶をデザインし描いてみる。そして、次の課題は、「花を飾る新しい方法をデザインしてください」というもの。これもみんな思い思いに描く。結果、それぞれのデザインを比較してみると、前者の新しい花瓶のデザインよりも、後者のデザインの方が自由で面白いものがたくさん出てくる。つまり、「花瓶」という概念に捉われず、「花を飾る方法」というファンクションで捉えることで、発想の幅が広がるのだ。このように発想の幅を広げることで、新しいアイデアやイノベーションに繋がっていく。

「新しい花瓶」ではなく、「花を飾る新しい方法」で発想する

3. 「新しいアイデア」というものは無い

「イノベーション」というと、何か革新的なアイデアでなければならないように感じてしまう。しかし、実は「新しいアイデア」というものは無い。上述したことと矛盾するようだが、全てのアイデアは既存のアイデアのパクリだったりする。

例えば、「iPhone」は、世の中を変えるような革新的なイノベーションだと言われる。それは間違いないが、iPhoneより前にタッチスクリーンの携帯は、Nokiaなどが出していたし、技術的にも特に新しいものではなかった。結果的に大流行したものが、イノベーションと呼ばれているのが現実だ。

他にも、Googleの「20%ルール」は、3Mが最初に導入していたことを真似しただけ。グーグルが革新的な企業として見られているから、そういったアイデアもGoogleの「イノベーション」と考えられているが、意外とみんな既存のアイデアのパクリなのだ。「天の下に新しきもの無し」と聖書にもある通り、「世の中に新しいものは無い!」と考えよう。

「天の下に新しきもの無し」、実はみんな誰かのモノマネだった。

4. アイデアは既存要素の新しい組み合わせ

『アイデアのつくり方』という有名な本がある。ジェームス・W・ヤングというシカゴ大学のビジネススクールの教授の本。とても薄い本で読みやすくお勧め。その本の中で著者は「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」と断言している。これはまさに上述した通り。ヤング氏によれば、そうした組み合わせを見つけることが重要であり、そのためには、ある事実とある事実の関連性を探ろうとする心の習性が必要だと述べている。万華鏡を例えに出して、色々な組み合わせをすることで新しいものが生まれるのだと説く。

アイデアは、万華鏡 = 既存要素の新しい組み合わせに過ぎない

5. アイデア作りの公式

『アイデアの作り方』の中で、アイデア作りの公式があるので紹介する。アイデアは、次の5段階で作れるらしいので是非試してみてほしい。

第1段階:資料を集める。
第2段階:組み合わせる。手を加える。
第3段階:放置する。意識外で孵化するのを待つ。
第4段階:常にそれを考える。ユリイカ!
第5段階:具現化する。

まず関連する資料を幅広くたくさん集めてくる。次に、カードにそれぞれ記載して、組み合わせてみる。そうした資料の大事そうなな部分、一見関連性が無いものを組み合わせてみる。いろいろと一生懸命試してみる。一旦やめる。しばらく取り組まないで放置しておく(数日間)。体を動かしたり、関係ないことをやる。でも、そのことを常に考えておく。すると、あるとき、髭を剃っている時に、ふっとアイデアが落ちてくる。それが、ユリイカ!の瞬間。それからは、具現化するために最大限注力する。

昔読んだ川喜田二郎の『発想法』でも同じようなことが語られていた。こちらの本もお勧め。


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