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FF14 光の連続小説 【とある喫茶店のバックヤード 第5章】

喫茶店の建つ前にはピアノバーがあった

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第5章 とあるピアノバーの話

  ー 時は過去へ遡る。忌まわしき第7霊災の起きる少し前。


「これでよし。マーニュちゃん、ゆっくりと振り子動かしてみな」

 マーニュは、その小さい手で慎重に振り子をさわってみる。

 カチ、コチ、カチ、コチと時計の振り子は性格なリズムを刻み始めた。

「わ~すごい直ったあ。ちゃんと動いてるよ!時計のおじさん」

 マーニュに満面の笑みでそう言われた、時計のおじさんこと俺のおやじは、マーニュに軽くウィンクをし、丁寧に振り子時計の蓋を締め、専用工具を工具箱にしまい、錠をかける。

「マーニュ、すごいだろ。おやじにかかればこんなもんだ」

 そばでおやじの調整を見ていただけの俺もなんだか誇らしい。

「うんうん。でもモジャオがすごいんじゃないからいばらないでね!」

「誰がモジャオだ!俺はロビンだっつーの」

「あたまもじゃもじゃのくせにー」

 そう言うとマーニュは俺の頭をワサワサ触った。俺はそれを邪魔くさそうに払いのける。マーニュがケラケラ笑う。

 実のところ言葉に反して、俺はこのマーニュとのかけあいが好きだった。

 マーニュの笑顔は周りにいる者すべてを幸せにする。

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「時計直りましたー?コーヒー淹れますから飲んでいってくださーい」

 奥の部屋からおばさんの声が聞こえる。振り子のカチコチ音が正常に戻って、作業の終了がわかったようだ。

 マーニュの母親でもあるおばさんの淹れるコーヒーは、すごくおいしい。

「マーニュも手伝って」そう言われマーニュはいそいで奥の部屋へ行った。

 俺とおやじは振り子時計の位置を戻し、その場を片付ける。「よしロビン、あとは任したぞ」重いモノと専用工具の片付け以外は、俺がやる事になっている。おやじ曰く、自分に何かあっても一人で生きていけるように、徐々に仕事を教えるとのことだ。

 母親がなくなったのも大きいかもしれない。俺は子供心に真面目に受け止め、おやじの仕事っぷりをくいいるように毎回見ていた。

 

「ロビン君、今日はねロビン君のカフェオレ、マーニュが淹れたんだよ」

おばさんのそばでマーニュがなにやら得意げな顔をしている。

「そうそう、モジャオよ、ありがたく飲みたまえ」

「ふふふ。大丈夫よ私が見てたから」

 顔に出てしまったのだろうか、おばさんの一言で俺は安心して口にする。

「どう?どう?」マーニュが詰め寄ってくる…。

 おばさんの味には及ばないが正直美味しい。だけど俺は照れ隠しもあり、「まだまだかな」と言っておいた。プーと膨れるマーニュはかわいい。

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「コーヒーありがとう。じゃ今夜またくるよ。マスターにもよろしく」

 おやじがそう言い残し、俺たちは店をあとにする。

 このピアノバーは、マーニュの父でもあるマスターがピアノ、そしておばさんが歌姫として歌い、夜だけ営業している。

 昼、俺達が来たのは、エントランスにある振り子時計の調整のためだった。


 ― 日が落ちても世界は明るい。ダラカブはそれほど迫ってきていた。

 ピアノバーには俺たちの他に客はいないようだ。

「マスター、今夜も暇そうだな。あれ弾いてよ”Answers”」

 軽く茶化し、早速おやじはリクエストする。

「うるせー。それにしてもなんだ?湿っぽい曲だな。どうした今日は」

「ダラカブ見ただろ?今日も近寄ってきている。もう終わりだよ」

「ちょっと子供たちもいるんだから、そんなこと言わないで」

 おばさんはいつも優しい。

 あとこの場にはおじさんの弟子のようなゴブリンもいた。おじさんの言うにはこのゴブリンは、イディルシャイアで拾ったらしい。

 少し前まではこのピアノバーも賑わっていた。店の客が減ってきたのは、やはりダラカブのせいだ。今まで空にあった赤い月の衛星が日を増すごとに大きくなり、その様子に誰もが動揺していた。加えカルテノー戦場での、エオルゼア同盟軍に参加する者も多くいる。今では客は俺のおやじくらいだ。

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「”Answers”か……でもまあ湿っぽい歌ではあるが、希望も多少あるか」

 おじさんはゆっくりとピアノを弾き始めた。それに続きおばさんが歌う。

 ♫~

店内はしっとりとした雰囲気となる。いつもはおしゃべりなおやじも何も語らず、じっくり歌詞を堪能している。

歌詞の内容は、” 時代の終わりを感じる人々に、例え世界が終わり、自らの命が尽きる時が来ようとも、後に続くものはきっといる。正義は在り続けその意思は続いていく。望むままに信じて進め。きっと大丈夫" というような内容だ。

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 歌詞をじっくり聞いていたおやじは何かを決意し、おじさんに話し始めた。

「なあマスター、俺エオルゼア同盟軍に参加しようと思うんだ。だから店にはしばらく来られなくなる」

「なっ、同盟軍に参加って、ロビン君はどうするんだ?お前にもしもの事があったら、天涯孤独になるんだぞ」

「いや、参加するとは言っても前線には出ない。後方で武器の準備や調整をやる。彫金工だからな。だからその間ここでロビンをみててくれないか」

「それは構わねーが……」

「実はエオルゼア同盟軍には、ダラカブ落下を止める秘策があると噂で聞いた。それに賭けてみようと思う。子供たちにエオルゼアを残したいんだ」

 おじさんはしばらく考えてこう答えた。

「…ふむ。じゃあ俺も行こう。しばらく店は閉める。どうせ客は今じゃお前だけだ。子供たちはうちのモンに任せよう」

「馬鹿いえ、後方とはいえ戦場だぞ」

「それはお前も同じだろう。それに俺はこう見えても店をやる前は世界を周ってたんだ。彫金一筋だったお前よりも多少は腕に覚えがある。お前一人くらいは守れる」

「そうか、すまねえ…」

「気にすんな。うちの振り子時計の調整を任せられるのはお前くらいだ。万が一って事も起こさせる訳にはいかないからな」

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 次の日の朝、おやじとおじさんはカルテノー平原に向かった。

 ピアノバーには奏でる事をやめたピアノと、さえずる事のない歌姫と、幼子二人、ゴブリン一匹が残る。

 おやじは去り際、俺にこう言った。

「いいか。男はお前だけだロビン。俺たちが戻るまでマーニュちゃんとママさん、しっかり守れよ」

 おばさんは去る二人を見つつ、マーニュと俺を抱きしめる。

「頼もしい小さなナイトさん、よろしくね」

 

「ねえママ、お父さん達どこ行くの?」

 寝ぼけ眼でマーニュはおばさんに聞いた。

「お父さん達はね、エオルゼアを救いに行くんだよ。英雄さんなんだよ」

「え、そうなの!?すごいすごーい!あれ?じゃあなんでママ泣いてるの?」

「こ、これは眩しいから。さあご飯食べよ。ごぶちゃん手伝ってくれる?」

 そう言うとおばさんは涙をぬぐい、お店へ入っていった。

 マーニュとゴブはついていったが、俺はなぜだかその場から離れられず、去っていく二人をずっと見ていた。

 おばさんが苦し紛れに言ったであろう『眩しい』。しかしその時の戦場に向かう二人は、確かに眩しかったように思う。

 光の中に消えていったのだから。

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 三人と一匹の生活が始まった。

 マーニュはまだあまり物事を理解できていないようだった。一方俺はというともう既に母親を亡くしていたこともあって大体のことはわかっていた。

 親のいない生活のつらさ。英雄は誰でもなれる訳ではない事。戦場という場所の事。

 そしておばさんはというと…慣れないひとり親に突然なり、とてもマーニュの心の事まで構っている余裕はなかったように思う。

 

「ねえ、ママ、パパ今頑張ってるかな?英雄さんならきっとモテモテかもね。ママふられちゃうよーふふふ」

「うん。パパかっこいいもんね。心配〜」

 

「ねえ、ママ、パパお腹へってるかも。わたしお弁当持っていくー」

「そうだね。でもちょっと遠いとこだからママ持っていくよ…」

 

「ねえ、ママ、パパいつ帰ってくるかな?あした?あさって?」

「わかんないかな……」

 

「ねえ、ママ、わたしパパに会いたいな。ピアノひいてほしい」

「……」

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「ねえねえ、ママ……」

 おばさんの顔からは以前の優しい感じは消えていた。

「おい、マーニュちょっと、」

 俺は見てられなくなって口を挟んだ。

「うるさい、モジャオは黙ってて!わたしはママと話してるの!」

 俺は気づいていなかった。

 マーニュも限界だったのだ……。

 

 その時だった。

 窓の外がパッと光り、少し遅れてドーンという爆発音が続いた。

 続いて大地が揺れる。ギギギと店が軋む。

 混乱し動けない俺たちより先に、ゴブが動いた。

「オイ、空をミロ!」

 俺はなんとか体勢を立て直し、窓から外を見てみる。


 空を無数にまう閃光。炎弾。そしてその先には、昔本で見たことある…そ

うだあれは……龍神バハムート!

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第5章 とあるピアノバーの話 おわり


幕間コーヒーブレイク⑤

 エオルゼアのとある一角で、ひっそりと営業している喫茶店『純喫茶✨✨✨✨』は喫茶店好きの間では知る人ぞ知る名店だ。  その人気の秘密を探るべく、著者Charle Magneが突撃取材してきました。その第一弾となる今回は、最近入店したというフェイさん。

Charle Magne(以下しゃる)
 フェイさん、休憩中ありがとうございます。まずはフェイさんがこちらで働くことになったきっかけを教えてください。

フェイさん(フェイ)
 はい。わたし、以前にこのお店にお客として通っていたんです。その時からコーヒーの味ははもちろん、雰囲気、サービスすべてが素晴らしくて。

しゃる:確かにレトロ感のあるいい喫茶店ですね。

フェイ:そうなんです!それに何と言ってもBGMが素晴らしいと思いませんか?私、それに凄い惹かれちゃって。ああ、こんなお店で働けたらいいなーって思って、思い切って働かせてくださいって。それからですね。

しゃる:実際に働いてみてどうですか?

フェイ:実際は忙しくてBGMをゆっくり聴いている暇はないです。でも‥もうなんというか、それがすごく嬉しい。忙しくてもお客さんが楽しそうにここでのひと時を過ごしてくれていることが、ここで働けて良かったって思えるんです。

しゃる:なるほど。働く側での喜びに変わったという事ですね。休憩中ありがとうございました。

フェイ:ありがとうございました。


6章に続く




※作中に登場した楽曲、『Answers』は
FainalFantasy14 © SQUARE ENIX
内の楽曲です。

Answers

  • 作曲:植松伸夫

  • 作詞:佐藤弥詠子

  • 訳詞:Michael-Christopher Koji Fox

  • 編曲:成田勤

  • 歌:Susan Calloway



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