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『アフターコロナのニュービジネス大全』

タイトルの著作は、ビジネスだけではなく、世の中の変化、人間の行動と心理について考えるのに、とても役に立ちました。

冒頭で述べられている大きな世界の変化としては、二つのことが挙げられています。一つは、中国を筆頭としたデジタルマーケットの拡大です。そのことによって、世界中は多くのサービスが効率良く、ちょっとしたやり方さえわかれば簡単に店舗に行かなくても買い物ができたり、サービスを受けられたりする例が、多く挙げられています。一方で、実店舗と併用することで、高齢の方などに対してのサービスも充実させることができる仕組みも挙げられています。

そして、もう一つが、人間の精神変化です。上記ではビジネス面での変化ということが強調され、本書のほとんどがそれにあたりますが、導入部の部分でタイを例に上げ、「徳を積む」ということが注目されるようになりました。すなわち、一人ひとりが困難の中で、人間関係を豊かに保つことの重要性を感じ、困っている時に手を差し伸べることで、差し伸べた方も人間的なふれあいで満足感を覚え、差し伸べられた方も支援を受けることができる機会が増えたとのことです。

以上の二つの点を、1つずつの例で見て行こうと思います。

ネオ直販
これは、直販と言っても人と人が会うわけではありません。そうではなくて、宣伝はオンラインのライブコマース(生発信で商品について生産者や関係者が伝える)という形を取り、購入はオンラインで実施されます。
こうしたことを通して、以前は宣伝も難しかった山間部の農園の商品や、オンライン環境になれていない高齢の方が、どんどん会社の支援を受けて、産物を発信できるようになります。

購入者側も、コロナ下での情報錯綜の中で、信頼できるストーリー性がある商品を欲していて、さらに農家の方を助けたいという共感も、困難の中で存在しています。

ここからは、私の意見ですが、最近野菜のサブスクリプションや花の定期購入、ポスト投函のサービスも増えています。これらの背景には、もちろん人との接触を避けなくてはいけないという理由がありますが、一方で積極的な理由として、野菜の生産者から直接買う、花を定期的に変えることで、室内の環境を変え、精神的に変化を持ちたいという人間の心理の変化もあるように思います。

サブスクリプションが流行っている背景として、『サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル』の中では、今まで「商品」と見られていたものが、「サービス」として考えられ、長期的な目で消費者がその会社のサービスに関わりたいという思いで購入をするというトレンドがあるとありました。

もっと言えば、サブスクリプションを通して、自分の生活の中で自然に共感できるサービスで社会に変化を与えたい、家から出られなくても、自分の生活、さらに言えば社会の状態を豊かにしたいという気持ちがあるのかもしれません。

隣人ボランティア
こちらは、コミュニティの中で困っている高齢の方などのニーズに、近所の対応できる若者などが働くシステムです。
アプリ内に自分の状況を登録すると、同じ町の人々がボランティアとして外で買いものに行くなど、コミュニティ間の交流などにも繋がるシステムです。

このシステムは、英国でスタートしたもので、日本と違ってチャリティ団体という法人が存在し、多くのボランティア活動が行われているくにではあります。しかし、日本にも幼老複合施設などもできているように、年代や違いを越えて、自分のできることを他人のできない部分を補う形で成り立つシステムの土台は存在していると思います。これらはある程度土台ができ、両者の了承があれば、ビジネスとして有料サービスも入れることができます。人間がお互いに弱みを見せることで、ビジネスに発展する例が、いい意味でこうした例に表れていると思います。

他のビジネスとして「おうちカフェ」を開いて自分の持っている敷地内でコミュニティの人を少人数で集めて情報交換、収益事業をしたり、「アーバンガーデニング」という都市部でのガーデニングで自給自足だけでなく、自分の生活環境を豊かにしたりなど、自分を変えることで、周りの人脈に影響を与えようとする人も多くなってきています。その一つの表れが「スローライフ発信」で、自分の何気ない一日をYOUTBEに上げている人も多いようで、そこにビューアーが増え、広告が付きビジネスになることもあるようです。

我慢せず、変化すること
再び紹介した本の冒頭に戻るのですが、日本人は我慢することは習ってきたが、変化することにあまり慣れていないと書かれていました。しかし、上記のような変化を積極的に自分で作ることで、豊かになってくる部分もあるはずです。そして、今までとは違ったサービス、それを通して生活を、私たちが求めていることも、明らかです。

例えば、野外に映画鑑賞できるスペースを天気がいい時は設置して、お客様に貸し切りで特別体験を与える「臨機応変レストラン」といった例が、同じく本書には書かれています。以前ご紹介させて頂いた『ファンは少ないほうが稼げます』のように、現在は特別な体験、自分独自の体験を求める人が多いように思います。

変化することで、自分独自のストーリーを作っていくことで、そしてそこからは新しいビジネス、独自の生活、そしてさらには新たな社会変革が待っているかもしれないということです。


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