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18歳には重すぎる?「地域枠」という選択

こんにちは。けいしんです。
今回は、「卒業後9年間地域に縛り付ける『医学部地域枠』問題」という記事を紹介します。

インタビューさせていただいた医師の山本佳奈さんは、医学部の地域枠問題について、次のように述べています。(以下、記事より引用)

医学部の在学期間が6年間で、さらにそれから9年間となると、合計で15年、その地域に縛られるということです。現役で入学しても「お礼奉公」を終えたころは30代半ばになっちゃいます。
それに、大学にいる間にもいろいろな先輩や医者に出会って、新たな生き方や考え方に出会うでしょう。実際に実習に出てみたら、「自分に合う合わない」とか、「コレをやりたい」と医療の中でも別の道を選びたくなるかもしれません。
なにより、6年もあれば医学は進んでいきます。既存の概念が来年には全く新しいものに置き換わっているかもしれません。日進月歩で進んでいる医療の世界で、医学部の6年間+9年間の15年間同じ地域で働く、そんな未来の選択を高校生ができるのでしょうか。

地域枠で入学した学生は、卒業後、一定期間(9年)以上は特定の地域で働くことが義務づけられています。日本の医師の地域偏在を解消するための政策の1つとして取り入れられている制度です。(詳しくは、本記事厚生労働省の資料を読んでもらいたい。)

地域枠を選ぶことはハイリスク?人生をじっくり吟味できることが大切

医学部生の視点から見ても、地域枠を選ぶことはハイリスクのように感じます。
地域枠の致命的な問題は、たかだか18歳の人間が、自分が本当に望むような進路を正しく選び取れるのか、ということ。自分という人間を深く理解し、ゴールから逆算したうえで、進むべき道を選択する。これを上手くやってのける18歳は、ほとんどいません。にも関わらず、この地域枠という制度は、高校3年生という無垢な若者に、この先15年間の人生を決定させるというヤバい決断を迫ります。
本当に医学の道に進みたいのかさえ、よく分かっていないかもしれない彼らに対して、この選択肢を提示するのは、かなり酷。それは、右も左も分からない生まれたての赤ん坊に、ご飯の食べ方、一緒に遊ぶ友達から、習い事、休日の過ごし方まで、すべてを自分で決めてもらうようなものではないでしょうか。
そう考えると、地域枠はリスクが高すぎますよね。

それよりも、どの道に進んだとしても、いつでもそれ以外の道を選ぶことができるような環境に身を置くことが、10代の若者にとっては大切なのではないでしょうか。

地域枠で医学部に入れば、日本の医療崩壊に歯止めをかける一員にはなれるでしょう。しかし、それが個人の幸せと一致「し続ける」保証は、もちろんどこにもないのです。
それでも、医学部に入りたい!と思うなら、それもまたその人の決断。最終的には、自分を信じるしかない。どこの大学・学部に行くかだけで、人生は決まらないから大丈夫。そう言いたいところだけど、医学部の地域枠だけは例外かもしれないです。なぜなら卒業後の進路まで、まるごと拘束されてしまうのですから。
もちろん地域枠をあえて利用して、医者になるために舗装されたレールに乗ってしまうのも、1つの選択肢だと思います。もし、私が高校生に戻れたとしたら、その選択は怖くてできないけど。

長くなってしまったけど、一番大切なのは、自分の人生をじっくり吟味すること。これに尽きると思います。
吟味するためにはまず、信頼性の高い情報をたくさん集めてくることが重要です。美味しい料理を作るためには、良い材料が無くてはならない。そして、集まった材料を切ったり、炒めたり、一晩寝かせたり、味見したりしながら、自分が作りたい料理の輪郭をはっきりさせていくのです。

私は高校生のときに、この人生の吟味をサボってしまいました。周りに流されて、何となくカッコいいからという理由で、医学部を志望したんです。そして、大学3年生の今になってようやく「このままで本当に良いんだろうか?」と考え始めました。この気づきが功を奏して、人生全体を吟味し始めることができました。偶然にも湧き出た素朴な疑問を拾い上げるか否か。このたった一回の選択に、とてつもない力が秘められている。

むしろ、一回一回の選択の積み重ね方に、その人の人間性がにじみ出ている。朝一番に何をやるか。これもれっきとした選択の一つです。顔を洗うのか。水を飲むのか。オンライン英会話をやるのか。筋トレをするのか。スマホを眺めるのか。二度寝をするのか。きっと、このわずかな違いを軽んじてはいけない。そう確信したのは、つい最近のことです。

話をもとに戻します。だから、中高校生のみんなには、どんな人生を自分が歩みたいのか、じっくり吟味したうえで進路を決めてほしいわけです。
例えば、医学部を志望する場合。なぜ医者になりたいのか。医学部で何ができるのか調べたか。これだけでは不十分だと思います。もっと根源的に掘り下げて欲しい。
自分にとって幸せとは何か。たった一回きりの人生で、自分はいったい何がしたいのか。心の奥底から本当に自分が望んでいることは何か。もちろん、これらの問いに対する答えは、そう簡単に出せるものではありません。なぜなら、自分の人生に対する模範解答など、どこにも存在しないからです。
模範解答がないので、自由に答えればオッケーです。しかし、自分で導いた自由な答えには、責任というお荷物が必ずセットでついてきます。その終わりなき答え探しを手助けするものとして、読書、映画、親友との会話、ボランティアなどのたくさんの活動があるわけです。できれば自分以外の誰かと関わって、その体験をじっくり味わってほしいと思います。他者と比較してはじめて、自分という人間の輪郭がくっきりと見えはじめる。自分以外の人間が、今この瞬間に目の前にたしかに存在しているからこそ、自分を自分だと認識できるようになる。だから、座学的な勉強をするだけではなく、多種多様な経験を通じて、いろんな人と触れ合って、最終的には自分自身に立ち返って考えること。これがすなわち、人生を吟味することだと思います。

人生の吟味とは、学生という立場を超えて、心臓を鳴らしている一人間として欠かすことのできない活動だと思うのです。

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