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君は生き残ることが出来るか-2

 前回までの「リビングデッドクライシス」は…
「ダメだ、これ以上は抑えられない!!」
迫り来るアンデッド達の群れ、今にも打ち破られそうなドアを必死に押さえるジョン。
既に自我を失いかけているブレッドを必死に押さえ込むミランダ…

 おっと話が違ったようだ、失礼。
上記についてはまたの機会に書くとしよう。
本題は「酒と男と歌と酒」であった。

 背後にある黒板メニューと貼り紙の狩猟メニュー。
その中から僕が選んだ一品はラスカル焼きだった。
「さようならラスカル、達者に暮らせよ」
でお馴染みのラスカルが真っ先に思い出される。
しかし残念ながらあんな可愛らしいものではない。
アライグマは田畑を荒らす被害を及ぼす特定外来生物なのだ。
言い忘れたがマスターは正式な許可を得て狩猟を行なっているハンターなのでご安心を。

 いよいよキッチンのコーナーにある七輪で、タレを絡めながら炭火焼きされた大きなつくねが、卵黄と共に皿に並べられて出てくる。
良かった、幸い愛くるしい見た目はしていない。
しかしながら炭火焼きされた大きな月見つくねは最高に食欲をそそるビジュアルをしている。
早速一口…
「何だこれウメェ〜〜〜!!!!」
鳥や豚のつくねとは違い、全く臭みの無いジューシーな塊が、肉の旨味と程良い脂が相まって口一杯に広がって行く。
正直マスターとのトークで、住民に迷惑をかける牙を剥き出しにする獰猛な害獣というイメージが刷り込まれたせいか、もっと野性味あふれる特殊な味を想像してしまっていた。
しかしながらそれは良い意味で裏切られた。
脂身たっぷりのA5ランク和牛と良い勝負じゃないか。
まさかワンコインでそれを食べられるとは。
これまた玉露ハイが進む。

 ふと皿に目を向けると下敷きにされていたレタスしか見えない。
「(あれ、俺全部食ったのか?!)」
いつの間にか愛くるしいラスカルは消え失せていた。
さようならラスカル。

 こうなれば確実に荒々しいところを狙わねばなるまい。
狩猟メニューを目を凝らして眺める。
イノシシと一口に言っても、もも焼き、バラ焼き、つくね、アバラ焼き…
ちょっと待て、アバラ焼き??
多くの狩猟メニューに埋もれて危うく見落とすところであった。
これは荒々しいぞ。
森の中を裸にブーツで駆け回るミスター大泉洋の如く荒々しいではないか。
早速発注。

 再び炭火で焼かれ、大皿に盛られた大きな骨が出てきたではないか。
「手掴みで豪快にかぶりついて行っちゃってくださいっ。」
マスターに言われるがまま、このアツアツの骨を両手で持ち、別皿で出された焼肉のタレを絡めてかぶりつく。
「肉だぁ〜!!!!」
イノシシは最近割と色々な店で食べることが出来る為容易に想像はつくが、これは凄い。
もも焼き等に比べると全然軽い臭みと、肋骨にしがみ付く強い肉感。
筋や硬さを感じる訳ではなく、肉をしっかり食ってるぞという心地よい弾力。
しかも両手で掴んで食べてしまうなんて、まるで森の中で自分が取ってきて焼いて食べている気分になってくる。
仕留めて解体しているからこそ出来るレアな一品だ。
「スペアリブ、お前の時代は終わった。」
そんなことを思いながら、肉を一口噛み締める毎に臭みをかき消すかのように香り高い玉露ハイが対抗してきて両者どんどん進んでしまう。

 大きかったこともありまずまずな時間楽しませていただいたところでいよいよ〆に行こう。
ここは確実にラーメンだ。
あんかけ揚げそばや炒飯、インドネシア焼飯まである何でも来いの布陣だが、今日はあえて小学一年生の時初めて食べたしょうゆラーメンで原点回帰をしよう。
鶏ガラと背脂のこってりしていそうで、優しい醤油のあっさりした味わい。
やや硬めに茹でられた中太ちぢれ麺のシンプルなラーメン。
「やっぱりこれだ、最高に美味い!!!!」

 今宵も最高のひと時を過ごさせてもらった。
気付けば半分でキープしていたボトルは一本追加し残り半分。
一本飲んじゃった…
キーホルダーを新しいボトルへ付け替えて今日も置いて行く。
続きはまた今度。
結果的にヘビーローテーションな店だ。

 だが実は、この店で一番好きなラーメンは本当は味噌ラーメンである、日本一の味だ。

次の店へ続く

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