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君は生き残ることが出来るか

 トークテーマどーん!!
まず第一弾は重要である。
誰しもが知っているチェーン店から始めるのが無難なことは重々承知している。
それではどこにしようか。
そう、ここを立ち上げた時から決まっていた、ここにせざるを得ない。

 我が出身地、千葉県は船橋。
駅からまぁまぁ離れた立地なので知る人ぞ知る名店だ。
大きな看板の下に、「いらっしゃい」とカントリーベアーシアターのように喋らんと鎮座する大きなイノシシの頭部剥製。
名前は「志源商塾」。
ここはすなわち、ラーメン屋だ。

 いきなり諸君には意味がわからないだろう。
ご案内するのでまぁそこに座っててくれ。
いや、セーフティーバーは私が降ろす。
ここは知る人ぞ知る名店のラーメン屋だ。
ただし、雑食酒家という名目がある。
なんとここはラーメン以外に美味い肉やお酒が楽しめるのだ。
更に僕が初めて常連となった店だ。
常連になるような店だ、大事にしたい。
大事にし過ぎてバイトをさせてもらったこともある。
彼此小学一年生の時から20年以上に渡る馴染みの店だ、皆には詳細は伏せておこう。(結構店の特徴言っちゃったけど)

 きっかけはその昔、まだランチ営業をしていた頃にラーメンを食べに行っていたことだ。
それが高校を卒業する頃にはスカウトを受けバイトをしてみると9割方飲み屋になっており、最近はマスターの趣味により狩猟を全面に押し出した店になっているではないか。
しかし、何も問題はない。
先にネタバレをしてしまうと、〆のラーメンは僕史上日本一だ。

 店はL字のカウンターにマスターが1人。
威勢の良い声にヤンチャな風格に醸し出される渋さ。
店内には大きな水槽にリクガメや、芸能人のサインや写真。
知る人ぞ知るこの名店には、お忍びで芸能人やスポーツ選手が時たまやって来るのだ。
しかしながら店先に剥製が掲げられている時点でお世辞にも入りやすいとは言い難い。
しかしそれが良いのだ。
常連になってしまえばこっちのもの、マスターとの軽快なトークと料理で思わず酒が進む。

 カウンターの奥に座り、マスターの前を確保し注文を始める。
「生と馬刺し」
ここのビールは生と瓶が選べるが、どちらにしても大きい。
コスパ良しなのだ。
更にしっかりサシの入った馬刺しは口の中でトロけた脂となり、麦芽の炭酸でそれを流し込む。
「くぅ〜、美味い…」
まだ狩猟メニューに行くのは時期尚早。
しかしながら今日は肉で行こう、そう思わせられる店内の匂いと雰囲気である。
目線を上げるとそこには小さなテレビと、その下に並ぶ散弾銃の薬莢と、ミニチュア達が銃を構えてこちらを睨んでいる。
まるで自分も獲物になった気分だ。
生きて帰れるのか、店のメニューに並んでしまうのではないか、と震撼する。

 続く飲み物は焼酎だ。
ここはボトルキープが半永久的に出来るので確実に焼酎だ。
バイトをしていた過去もあるのでボトルは自分で探す。
わざわざ毎回名前を書かなくて良いようにキーホルダーをぶら下げてある。
氷と割ものを発注、今日は玉露ハイで行こう。
お茶と共にマスターが挽いた玉露の粉末をひと匙。
深みのある玉露ハイで飲めば飲む程健康になっている気分だ。

 ここで遂に狩猟メニューに手を出そう。
無難にイノシシか、はたまた鹿か…
スズメの丸焼きなんかもなかなかワイルドで良いじゃないか、しかも2羽付いてくるなんてこれまたコスパ良しだ。
イノシシや鹿であれば、あるところにはある、それなりにお目に掛かれる品なので一旦保留。
1発目はやはりガツンと慣れないものから行き、口と脳を奮い起こしつつ慣らして行こうではないか。
…そして僕はネーミングセンスだけで一点集中を決める。

「すみません、ラスカル焼きを。」

続く

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