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久々の「おいしかった」のありがたさと、5年前の「おかゆのおもい」。

先日。

お昼のメニューは「カレイの煮付」でした。

上司や同僚男性Dさんがどのように作ってるかは知らないけど、たぶん大鍋に60尾の魚をぶっこんで作ってる、とは思う。

ワタシはしばらく前から、中鍋二つに半分ずつ分けて煮物類は作ることにした。その方が煮崩れの心配や、火の通りの片寄りを心配しなくて済むから。
なんせ大鍋、底が曲がるだけ曲がっちゃってるから、火通りの加減なんててんで出来ない「魔女のごった煮」しか出来そうもない代物なんでね。

正直二個の鍋を出して作業するのはめんどくさいんだけど、ワタシ的には、

「めんどくさい」=「手が込んでいる」=「おいしくなるはず」なのでね。

いかに自分の作業工程の効率化を図って、めんどくさいことをこなしていくのが、今でも自分の中にある課題です。


それでも煮物って、その間火加減に任せられるので調理法としては非常に効率的ですよね。その間他の作業が進められるし。

なので比較的、気持ちにゆとりをもって作れまして。味を作った煮汁を水の状態から魚を入れてゆっくり火入れして。もちろん灰汁とりもしっかりして。


いつも通り、デイサービスの下膳にフロアまで出向いたんですけどね。

いつも通り、片付けだけして挨拶して出ようとするワタシめがけて、一人のお客様が近づいてきました。

この半年でデイサービスのお客様とお話することは一度もなかったのですが、確実にワタシ目掛けていたので周りのスタッフも「〇〇さん!どこ行くんですか?」と、ちょっと驚きの様子。すると、

「今日のカレイ、とってもおいしかったわ!私好みで優しい味付けで♪」

と、わざわざ言いに来てくれたわけでして。

久々のことで驚きと同時に大変ありがたく、嬉しく思いました。


やっぱりね。


ちゃんとしたもの作ってれば、伝わる人には伝わるんだなぁと。



前職では、必ずお客様のお食事時間にメニュー説明をするのも仕事になっていて、その時「お客様の声を聞いてくること。」と言われていたので、割とお客様と接することもありました。

が、今の職場では、なんつうか「勝手に作って勝手に片づけろ」的雰囲気が職場内にありましたので、その辺非常にもやっとしておりました。


7月に転職してから約半年。

そのお客様のおかげで始めて、今の職場にも救いがあるんだなぁと思えましたね。




以前、違うブログで書いてた記事を転載せさせていただきます。

ワタシがこの仕事を続けてる、そのわけ。



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2017年4月某日

おかゆのおもい



たいがいズボラだし、何をするのもめんどくせ~が最初に出る。


たとえば家事とか。家事とか。家事とか(笑)。


あとねぇ。

猫好きと言いながら、どうか自分で缶詰とか開けてくんね?便所とかも掃除してくんね?とか思う。。。まぁアニキがいる時は奴が召使いとして従事してくれているがね。



そんなワタシがズボラ稼業を停止する時間がある。


仕事してる時ね。


なんだろね~。時間が勝負の仕事なんだけど、どうにかしてもっと手の込んだことが出来ないかとよく考えたりする。仕事になると「めんどくさい」とかってあんま思わないんだよなぁ。


こないだ。


昼提供を無事に終え、自分らがご飯を食べてる真っ只中だった。


介護スタッフが「すいませ~ん、おかゆ余ってませんかぁ?」とやってきた。提供時間からはだいぶ経っていたので、うちらが思うのは「職員でおかゆ食べたい人がいるのかね?」ってのが一番最初。けどその日はあいにくおかゆのあまりがなかった。


「今日はおかゆはもうないですぅ。」


と社員が答える。それで普通ならスタッフもそうですか~って帰るのに、ちょっと困った顔してて。あれ?誰のためのおかゆ?


「倉田さん(仮名)がご飯の途中でおかゆ落としちゃって~。」


あら。それは大変。

そう思ってすぐ席を立つ。おかゆがないなら作るしかない。
当たり前だ。
それが仕事だ。


そういう時の早さだけは、誰よりも一番な自分を褒めたいなーと思う。おーよちよち



倉田さんは刻み食とろみ付提供の、ちょっとお食事に難があるお客さん。何の症状なのかはわからないけど、あんまり自分で体の自由が利かないらしく、ある時車いすから転げ落ちそうになってるのを見かけたこともある。


そういう人だからこそ、食べたいものを食べて欲しいよね。簡単なことじゃん。


すぐに作っても、あっついままになっちゃうから、一回が~っと沸騰させたおかゆを別の鍋に水はって、冷ましてから持ってきましたよ。


「倉田さ~ん、お待たせしました~。」


いつもは厨房にいるから初めて声をかけましたのよ。

自分で車いすで体制戻せないくらいのおじいちゃんだから、意思の疎通って図れるのかな?とか思ってたのですが、予想外に笑顔を見せてくれて、


「すみませんねぇ。お手間かけまして。」


とか丁寧に、ゆっくりと言ってくださってとても嬉しく思ったし、びっくりした。

この人はちゃんと食べて、しっかりと生きているんだよなぁと。

当たり前なんだが、そういう当たり前に気付かされた。そのなんとありがたいことかねー、と。


感謝されて、それがまたこちらの感謝につながって、ありがたい仕事なわけです。


食べることは生きることです。


そのお手伝いをさせてもらってるわけだから、それをこうやって思い返させてもらって誠にありがたやありがたやだ。




忘れないようにしたいね。そういう仕事だってことを。いつまでも慣れないようにしたい。



どうぞおいしいものを召し上がれ。

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五年も前のことだけど。

今でもちゃんと覚えてる出来事です。


どんだけヤバい厨房にいても、ほんの少しでも自分の力でおいしいものを食べてもらう努力だけは、これからも続けようと改めて思いました。

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