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意味と美しさのあいだ

少し前に、アン・モロウ・リンドバーグ著「海からの贈物」より、印象に残った部分をご紹介しました。

今回も、この本の一節をご紹介したいと思います。

著者が島を離れ、もとの日常生活に戻るときに、これからどのように生活していくかの指針を述べている部分です。

… 人生に対する感覚を鈍らせないために、なるべく質素に生活すること、体と、知性と、精神の生活の間に平衡を保つこと、無理をせずに仕事をすること、意味と美しさに必要な空間を設けること、一人でいるために、また、二人だけでいるために時間をとっておくこと、精神的なものや、仕事や、人間的な関係からでき上がっている人間の生活の断続性を理解し、信用するために自然に努めて接近することなど…

この箇所は、読むたびに、目にとまる箇所が異なりますが、中でも一番好きな箇所が以下。

意味と美しさに必要な空間を設けること

意味と美しさの間に、物理的にも、精神的にも何もない空間があること。
自分と日常の出来事の間に、空間をあけること。
自分と、自分が向き合いたい人のために、時間をとっておくこと。

そんなことが、たまらなく慕わしく感じられます。

一本の木は空を背景にして意味を生じ、音楽でも、一つの音はその前後の沈黙によって生かされる。蝋燭の光は夜に包まれて花を咲かせる。つまらないものでも、回りに何もなければ意味があって、東洋画で白紙のままにされた片隅に、秋草が何本か書いてあるのもその一例である。


昨日、森の中でヤブミョウガを見てきました。

茎をぐんと伸ばし、花を咲かせ、実をつけ、落ちていく。
その様子は結構バラバラで、思い思いにやっている、という感じでした。

さて、今の私の周囲との距離感覚はどうか、といえば…
隣を気にしつつ、自分は自分。
そんなところでしょうか。

アン・モロウ・リンドバーグの境地に至るには、まだ時間も経験も足りなそうです。

秋深き 隣は何を する人ぞ

松尾芭蕉


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