9 母が歩けなくなったワケ
一年前、母は珍しい大胸筋への転移が見つかった。場所が悪く手術が出来ず抗がん剤治療となった。
抗がん剤治療はさまざまな副作用が出る辛いもの。
その一つが手足の痺れ。
母は足の痺れが取れず悪化する一方だったが
先生へ何度相談しても、副作用でしょうと突っぱねられるだけだった。
しかし日に日に歩けなくなる母。
車椅子となった母に先生は驚き、やっと検査となった。
そこで見つかった深刻な状態の脊髄と脳への転移。
脳転移は癌の転移の最終地点とのことで、
これまで脳のMRIは取らずに見過ごされてきてしまったのだった。
脳にはすでに癌が多量に転移しており、もはや手の施しようが無い。
脊髄への転移は、足が完全に動かなくなってしまっては抗がん剤治療を行なっても意味がないという。
足が動くうちに、気づいて抗がん剤をしていれば…
脳転移が早くわかっていればガンマナイフができたのに…
母は悔しそうに言う。
「自分の体のことは自分が一番わかっているのだから自分の身は自分で守らないとだね。」
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