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母と過ごした2ヶ月半

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2022年8月。私は27歳、母は59歳。急に足が動かなくなった母は、ガンが脳に転移しており、余命1,2ヶ月と宣告される。私は仕事を休み、自宅で母の介護がスタートしました。母と過ご…
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2022年12月の記事一覧

33 思い出の一杯

「実家に行きたい」と伝えてくれた翌日、 母の実家に向かった。 前回の滝同様、福祉車両を手配してお出かけの準備。 出発の直前には目眩止めを飲んでもらい車椅子ごと乗車する。 しかし、最近は寝ている時間がとても長い。 また、声をかけても返事がないことが殆どになってしまった。  食事に関しても、次第に朝ごはんを食べなくなり、昼ごはんも食べなくなった。 夜も服薬用のおかゆとおかず数口だけの日や、アイスやおかしを数口食べるだけの日も出てきた。 それでも母には食べたいものがあった。

32 今を無駄にする人に未来はない

明日、実家に行きたい。 母がヒステリックモード全開で怒りながら伝えてきた。 しかし、こちらは母を連れて行くとなると福祉車両の予約やなんやかんやいろいろ準備が必要になってくる。 「今度の週末にしようよ」 みんなでそう返した。 するとさらにヒートアップし 「今いかないと、もういけるかわからないんだよ!」 その言葉でハッとした。 なんてことを言ってしまったんだと 心が苦しくなった。 私が日々一緒に過ごしているこの人に この世の明日が来る確率は物凄く低い。 それなの

31 カウントダウン

8月下旬に退院してから、私達は毎日母の様子をカレンダーに記録していった。 この記録を見返しながら姉が言う。 「毎週、火曜日がターニングポイントなのかも…。」 退院して一週間近くは、もちろん来客の嵐。 その中でも母はいろいろな人と楽しくお喋りができていた。 しかし、火曜日になると 痰が絡み苦しそうな様子になっていた。 その後も一週間ごとにせん妄のような症状が出始めたり、尿の不調や食欲のさらなる低下、睡眠時間の増加、意識障害…… 『あ!これが、週単位か!』 終末期に

30 大丈夫だよ

がんの終末期患者にはよく現れるという 現象の一つに「せん妄」がある。 注意や理解、記憶などの機能が急性に低下し、変動することを特徴とする状態 とのことで… つまりは  急におかしくなる、 いつものその人ではなくなる こと。 そしてそれは戻ったり、おかしくなったりを繰り返す。 母もせん妄のような意識障害のような状態が多く見られた。 「今ハイヒールで横を通っていったの、誰?」 「今、テーブルに虫がいたよ」 「団子を冷蔵庫に入れてきて!」 「火、止めたかどうか忘れちゃった…