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プレミアリーグ第15節【トッテナムvsウルブス】〜夜明けを待つ狼は彷徨う鳩を食いきれず〜

今回はプレミアリーグ第15節トッテナムvsウルブスの戦術解説をします。

スターティングメンバー

開幕のスターティングメンバーとポジションです

※トッテナムの5はホルグアインではなくホイビアです

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トッテナム 3-4-2-1

ウルブス 4-4-2

トッテナムはハリーケインを起点にソンフンミンの飛び出しやエンドンベレのドリブルでの前進が見られました。3バックなので最終ラインのビルドアップ時のシステム変形はなくホルグアイン、ウィンクス、ハリーケインが一列後ろに降りてきてゾーンを上げて行くという形でした。

ウルブスのビルドアップは後ろから丁寧に繋げて前進する形となっており、トッテナムのFWが1枚のプレッシャーに対して最終ラインは3枚で回していました。ファビオシウバが前で杭を打つ事で中盤の空いたスペースにボランチの選手がコンドゥクシオンを使いサイドに散らし、トラオレ、ネトで勝負する場面が多く見られました。

前半

30秒【ソンフンミンの飛び出し】トッテナム

トッテナムは前半30秒デイビスのロングパスからソンフンミンが飛び出しコーナーを取りました。

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1、最終ライン3枚のボール回しからデイビスがボールを持ち、ルックアップ

2、ケインが中央の位置で相手を背負う動き

3、ソンフンミンがセンターバックの間に抜け出し、コーナーを取る

4、コーナーのこぼれ球をエンドンベレがミドルシュートでゴールゲット

★重要ポイント

・ソンフンミンの抜け出すタイミング。デイビスがボールを持ち、ルックアップのタイミングを見て動き出す。走り込む方向として、コーディーの前を通り、2人の間を通過する。この走り込みによってオフサイドになりにくく、なおかつゴールに近くなる


4分30秒【サイド起点のビルドアップ】ウルブス

センターバックのが大きく幅をとり、キーパー合わせて3対1の状態でビルドアップスタート。そこからサイドのトラオレを起点に浮き球のボールを出し、ワンタッチで前に滑らす形でボールを置く、トッテナムの選手3人ついてきたところを後ろのルーネンデベスに落とし、もう一度同サイドのトラオレを走らせる。

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1、センターバックのコーディーがサイドを変える

2、サイスは一列飛ばしてトラオレへ浮き球のパス

3、前に落として中盤のポテンセが受ける。そのまま後ろへの落とし

4、ルーネンデベスがダイレクトでもう一度トラオレへ

★重要ポイント

・トラオレを起点にした流れから3人目の動きでもう一度トラオレを走らせる構造はウルブスの中でもデザインされていると思います。ボールが入った瞬間のサポートの動きはウルブスにしかない速さです。次のプレーを予測してサポートの位置とボールの落とし方を考えています。


31分【高速ライン間プレス】ウルブス

トッテナムは31分最終ラインのサンチェスから中間ポジションに立っているエンドンベレに楔のパスを出しますが、ウルブスのボランチの2人の高速プレスにより前進を無効化される。

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1、最終ラインのサンチェスがルックアップのタイミングでエンドンベレはバックステップを踏み中間ポジションに立つ

2、サンチェスは縦への楔を打つ

3、ウルブスのモウティーニョ、ポセンテは入った瞬間、高速で奪いに行く

★重要ポイント

・エンドンベレの受け方。ボランチの選手は四方八方からプレッシャーがくるためなかなか前向きでボールを受けることが難しいです。しかしこのエンドンベレのように相手選手の間にポジションを取り、バックステップを踏みながらボールを受けることによって前向きの状態でボールを持つことができます。この場面では取られてしまいましたが、いい受け方だと思います。

・ウルブスの2ボランチのディフェンススピード。中央で相手に前向きにボールを奪われると危険だと判断したモウティーニョとポセンテはドリブルされる前に奪う選択をしました。


31分50秒【トッテナムの攻撃デザイン】トッテナム

トッテナムの攻撃チョイスの一つとして高速カウンターがあります。高い位置からケインが一列前に降りてきて、ソンフンミンが縦へスプリントする攻撃方法。これはゾーン1で縦に距離がある場合に多く使われます。

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1、ボールを奪ったホイビアは一列降りてきたハリーケインに縦パスを入れる

2、縦パスが入る瞬間にソンフンミンは縦へのスプリントを見せる

3、時間を作りソンフンミンをスピードに乗せる

4、キープできず相手に奪われる

★重要ポイント

・ボールを奪った瞬間のポジティブトランディションのところで、ハリーケインが空間を見つけて降りてくる動きがとても重要になってきます。チームはトランディション後、ボールを落ち着かせるために1、2本パスを回すことを優先します。そのためには奪った瞬間にパスラインを引かないといけません。困っている見方をすぐに助ける動きは、プレミアリーグでもトップレベルだと思います。


後半

後半の印象としてはウルブスの攻撃により厚みが出た気がしました。個の杭止めに対してのハーフスペースを活用するプレーが多く使われるようになりました。対してトッテナムは守備ラインに大きく空間が空いたり、選手間の距離が広くなったと感じました。


51分【ハーフスペースから3人目の動き】ウルブス

ポゼッション率や個での仕掛けが多くなったウルブスですが51分には、サイドでのボール回しから3人目の動きでチャンスを作りました。

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1、ネト、ポテンセ、ファビオシウバが入れ替わりながらボールを回す

2、ポテンセが中に向いたタイミングでルーネンデベスがハーフスペースへ入り込む

3、ダイレクトのタイミングでネトが裏への抜け出し

★重要ポイント

・ウルブスはゾーン3の場面で、スピードを上げるタイミングを考える。トッテナムはほとんどの選手が守りに入っているため簡単には通させてくれない。この状況を打開するには、個人での突破か、3人目の動き出ししかない。ポテンセがボールを持つと同時にネトは一列前へ移動する。移動したことにより、最終ラインと、2列目のラインの間に空間ができる。そこへタイミングよくルーネンデベスが走り込む


65分【ハーフスペースの入れ替わりサリーダデバロン】ウルブス

ウルブスはこの試合ハーフスペースを使用した前進方法を多く見せます。それをするためのデザインがわかりやすくトッテナムに効いたようです。

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1、センターバックのサイスは最終ラインで前向きの状態でボールを受けるとハーフスペースに立っているファビオシウバの動きを待ちます。

2、ファビオシウバはサイスのルックアップに対して縦への動き出しをします。

3、その動きによりトッテナムの線が釣られて、空いたハーフスペースにポテンセが入ってきます。

4、前向きで受けたポテンセはネトにボールを渡し、シュートまで

★重要ポイント

・この状態でポテンセ前抜きでボールを受けれたのはしっかりとしたウルブスの攻撃デザインがあったからです。まず、足元の技術、スピードのあるトラオレが大きく幅をとります。トラオレが幅をとると、デイビスはマンマーク(ゾーンで守るとフリーな状態でボールを持たれ、不利になるため)で付きます。スタートポジションにいるファビオシウバが気になるセンターバックのダイアーはウィンクスに受け渡しますが、サイスがルックアップのタイミングで中へ動き出したためついていかなければならない状況になりました。今この場面はトッテナムのサイドバックがサイドに釣られ、センターバックが中へつられている状態。そこへ空いたスペースへポテンセが入り込むというビルドアップ戦術です。


修正ポイント

トッテナム

トッテナムの修正ポイントとしてライン間の整理と、選手間の距離が大きく空けすぎているかなと思いました。連戦の中このサッカーをしているわけでもありますので一時的な集中力が後半になると蓄積されている感じを見られました。ボールホルダーに対してのサポートの位置が修正できておらず、攻撃が1テンポ遅れてスタートしていました。ウルブスの集団守備の速さが目立ちましたが、自分はトッテナムの選手が2度目のパスラインを引くことをサボっているように見えました。短いスパンで試合が重なりますが勝ち切れるように頑張って欲しいです。

ウルブス

後半のウルブスの攻撃に関しては自分たちのサッカーがしっかりできているように感じました。トラオレ、ネトを中心に個人での怖さを武器に全体でスペースを利用する攻撃が発揮できていました。守備はサイドにボールが出た場合の守備の方向が気になりました。1対2の数的不利の状態でプレスの方向を間違えてしまうと一気に前進され最悪失点まで繋がります。選手1人1人の個人戦術の部分をもう少し明確にする必要があるのかなと感じました。


今回はトッテナムvsウルブスの試合をレビューしました。もしよければ投げ銭程度に頂けましたら幸いです。


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