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聴診はカサカサ音との戦い

ブルガリアの医学部では、2年後期から一般内科・外科の病棟実習が始まります。

まずは患者の疾患に関する簡単な概要や、問診と身体所見を取り方を指導医から学びます。

この時期に、実習のグループメンバーで競い合っていたのは誰が1番正確に聴診ができるかどうか。

医学の知識を踏まえてディスカッションする事は難しいけれど、心音を聞き分ける事ができれば、心雑音がある、なしで指導医に報告できるし(本当は聴診はもっと奥が深いが...)、何より自分で選んだ選りすぐりの聴診器で聴診するなんて、いかにも医師らしい!おもちゃを与えられた子どものように、みな夢中になって聴診をしたものです。

ブルガリアで身体診察の基礎を学び、現在も毎日の診療で患者の心音の聴診をしていますが、ある日ふと、ブルガリア人患者の聴診では聞こえた“あの音”が日本人患者からは聞こえないなという事に気付きました。

みなさん、一般的な日本人男性の体系を想像してみてください。

まず日本人は華奢で胸板が薄め!それに体毛が薄い人が多いです。

うって変わって、ブルガリア人男性患者は大抵肥満で、しかも胸毛をもっさり蓄えている方ばかりでした。

そう!

心音の聴診で聞こえた“あの音”の正体は胸毛と聴診器が擦れたために聞こえるカサカサ音!!

ただでさえ、肥満過ぎて心音が聞き取りにくい上に、カサカサを被せないようにと、聴診器の持ち方や患者の体に聴診器を当てた時の固定の仕方には苦慮したものです...

話は変わるのですが、私を含めグループメートのほとんどがリットマンという聴診器メーカーの聴診器を使っていました。

そんな中、鋼メンタルを持った唯一の日本人の先輩が使っていた聴診器がまさかのビットマン!!!
ブルガリア価格でお値段なんと破格の300円でリットマンの1/50の安さ。そしてリットマンの聴診器には膜型にLと書かれているのに対し、先輩の聴診器にはデカデカとBと書かれていました。

気になるクオリティは...先輩曰く想像通り...だそうです。リットマンでも肉という壁を超えられないことは何度もありましたけどね。

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