図書館

夏祭りの金魚はすぐにお別れしてしちゃうってよく言うよね〜、

まあ私金魚すくい超苦手だけど!
スーパーボールすくいは小学生のときからなんかめっちゃ得意、
みんなは夏祭りの屋台、何が好き?

あの街で偶然見つけた潰れそうなゲーセン、錆びれたコインと機械音としかめっ面のおじさん

夢は呆気なく醒めてしまうけれど、あの日の魔法は溶けない



コインを入れるとガタガタ機械が動く、たった300円で飽きるほど遊べるその場所は、2度と出られなくなるんじゃないかと思うほどの非現実世界だった



ビー玉は不思議なものだ

光の加減や世界の色でコロコロと見せる色すら変わる、もはや私の気持ちまで表しているような気がする


ころんと転がった透明なそのしずくは、世界の色を守っていたのかもしれない
遠くに離れて初めて気付いた、色なんて勝手に決めているものなのだそもそも




あの人のことも、あなたのことも、君のことも、あいつのことも、ふと思い出す瞬間は毎日ある


いつもの道を通って、いつものように過ごしていても

最近会えてないその顔や香りや声や仕草はすぐ思い出せる


何気ない誰かの言葉が、遠い昔の日のことを思い出させたり、当たり前にするものなのだ


ある女の子のお誕生日を祝うのに2泊の旅行をプレゼントしたことがある

彼氏と離れるのが寂しくて、彼のTシャツを持ってきてた
タバコの匂いしかしない、と笑っていたけど、眠るときそばに置いていた姿はあまりにも愛おしかった

香りの図書館を作ったら、そこに並べられるのはきっと
「シトラス」とか「フローラル」ではないんだろうな

雨上がりの帰り道、水たまりを飛んで超えた時の香りとか

お母さんには秘密ね、とおばあちゃんが手を握ってお小遣いをくれたときの香りとか

友だちに恋人ができて、なんとなく寂しくなっちゃったときの香りとか


そんなものだといい

香りが時間を思い出させてくれるなら、時間をそうして閉じ込めていられるのなら、


ビー玉の色は綺麗なままなのかもしれない

でもそうじゃないから、ビー玉が綺麗なんだと言うのは、あまりに安直でありきたりでしょうか?


思い出は美化されると言う、

どんどん美しくなる思い出に救われる日も苦しめられる日もある



ガラスでできたビー玉が、割れてしまうことだってあるのは仕方ないことで


その脆さを愛さなくていいほど、あなたが本当は強いことも私は知っている


ただその強さを、弱く見せることができるのもひとつの生きる術だと私は思うんだよ



私のおじいちゃんは金魚すくいですくった金魚をちっちゃめの鯉くらい大きく育ててた
庭の小さな池で泳いでいたのをよく憶えてる

それは70年の歴史になった、夏の奇跡だったのかもね

連絡もしなくなってしまったけれど、キミとあの人もそうであるといいと心から思う

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