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再びの暗雲

バイトにも徐々に慣れてきて
収入もそこそこ安定するかと思ったのも束の間

私は再び、父からお金を貸して欲しいと
言われるようになりました。

私が戻ってからも
父の仕事は週に数回のバスの送迎のみ。

母は休みも取らずに
ペットショップの店長として働いていました。

高校生の弟の学費や教科書代などを
支払うこともできなかったので
私のバイト代からいくらかを渡して
充てていました。

しかし、運転免許を取るために
私は銀行からお金を借りており、
その際に、親から頼まれて上乗せで80万円、
合計100万近いお金を借りていたため
その返済もありました。

そのため、私の働いた分のお給料の
手取りはほとんどなく
貯金すらできなかったのです。

それでも、仕事と向き合う事で
気持ちが前向きになれるのが
まだ救いでした。

そんなある日
働いている私のところへ
父が弟と一緒にきました。

そして勤務中にも関わらず

「今日支払わないと、電気が止まる」
「お金を貸して欲しい」

と、売り場で言われたのです。

職場にまでくるなんて…。

正直、信じられませんでしたが
私は休憩の時間を少し早めてもらい、
父に銀行のカードを渡したのでした。

うちは本当に大丈夫なのだろうか…

そんな不安を抱き始めていたある日。

バイトが休みで、部屋で漫画を読んでいると

玄関でチャイムが鳴り
その後すぐに母の声が聞こえてきました。

その声は徐々に切迫していき
様子がおかしいと感じたわたしは
そっと部屋の扉を開き、玄関の方を覗きました。

「本当にお金がないんです」
「この通りです、すみません」
「お願いします、帰ってください」

そこには、玄関先で土下座をしている
母の姿がありました。

わたしの頭は真っ白になりました。

どこの誰がきていたのかは
わかりません。

母に声をかけても
「大丈夫だから」
と一言、言われるだけでした。

一体、この家はどうなっているのだろう。

そんな不安だけが募りました。


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