13番「おぼんからカップ落とす」(午後)

 先輩たちが施術をしている。私たちのフェリシーではお客様との接客は基本的に1対1で行われる。

 今日は私には予約が入っていない。フェリシーでは出勤=勤務という扱いゆえ、予約が入っていなくともその時間はお給料が発生する。

ザ・ホワイト企業フェリシー

 といっても、さすがにサボるのは後輩として気がひける。ゆえにこうして働いている。

 メイドによって人気度に差があるらしく、たとえ曜日が同じ日であろうともメイドさんによってはお客様との施術に時間を割くあまり、他のメイドとの交流ができないこともある。

 そんな尊敬できる先輩たちの役に立つために私たちがいる。

 施術用ベッドのタオルの交換、クローゼット内の確認から着替えや紅茶一式の回収など色々な業務を施術と施術のあいだにやらなければならない。

 私は準備の終わったことを知らせに待合室への階段を上る。

アカリ「もこさん、お部屋の準備できました」

もこ「お、ありがとう。アカリちゃん。では、お部屋の準備が整いましたので、ご案内いたしますね。お荷物お持ちいたします」

 もこさんがお客様の対応をしている。もこさんはお客様への対応はもちろんのこと、私たち後輩にも優しい先輩である。尊敬してしまう。

奈子「あ、アカリちゃん。つぎ、3番のお部屋の準備に行ってくれる?」

アカリ「分かりました」

 私はまた階段を下りて、さきほどと同じようにお部屋の片づけから準備に入る。

アカリ「ふぅ。片づけ終わった。あとは戻るだけ」

 私は安心しきっていた。

 (背景が天井になる)

アカリ「・・・ひゃあ!」

 私のおぼんの上にあったティーカップが宙を舞う。や、やばい

奈子「よっ、と」

 階段から下りてきた奈子さんが私のティーカップをキャッチしてくれた。

奈子「大丈夫?」

 奈子さんはアイドル活動をされているおかげか身体能力が高い。って言っている場合ではなく

アカリ「あ、ありがとうございます!」

奈子「もう気をつけなさいよね。ここの廊下は滑りやすいんだから」

アカリ「すいません」

奈子「ほらほら。ここにいると、施術の邪魔になるから、上にあがるよ」

 私と奈子さんの二人で待合室に戻る。

奈子「スリッパだと歩きづらいでしょ」

アカリ「そうみたいです」

奈子「上履きタイプの靴もあるから、そっちにしなさい」

アカリ「ありがとうございます。そうですね」

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