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1.6 wed 暗い映画が好き。成人式を思い出した

 お雑煮を食べた。この間人からもらったお餅を使って、友達とお互いの地元のお雑煮を食べ合う会。私の地元は白みそに丸餅。北陸のお雑煮は具沢山のおすましらしい。筑前煮みたいで(例えていいんだろうか)おいしかった。友達は友達で白みそのお雑煮を見て「シチューみたい、見た目がシチューだから味もシチューな気がする」と言いながら餅を吸っていた。人は視覚が8割である。

 暗い映画が好きだ。
 初対面の人とうっかり映画の話になると「どんな映画が好きなんですか〜」と聞かれてたじろぐ。「スケールがでかくて人が死ぬやつです」「ファンタジーですか?」違う。社会構造にもまれて人が死ぬ話が好きなのだ。爆裂に明るい映画も好きだけど、内省的なものを手に取ることが多い。
 この間、初めてゆっくり話した人とミュージカルの話になった。「ミュージカルはね、救いがないやつがいいのよ」と笑顔で言ってのける彼女はめちゃくちゃに大人だった。
「ミュージカルはほとんど見たことないけど、救いのない映画は好きです」「ほんと?分かるわあ〜、人が死ぬやつばっか見ちゃう」「あ、わたしも」「救いがないまま終わると安心するよね」それからしばらく、どの映画がどんな風に暗くてよかったかで盛り上がった。さほど親しくなかった人と意気投合する経験は初めてで嬉しかった。

 大人になればなるほど、人と仲良くなりやすくなるなと思う。年末年始のバイトでも何人か親しく話せる人ができて、なんで思春期の頃、学校でこういう風に人と話せなかったんだろうと不思議に思った。
 山本さほの『岡崎に捧ぐ』を読んで、中高特有のグループ意識を思い出した。あそこから出てこれてよかった、と思うのと同時に、もし当時の自分に会えたとして何もしてやれないなと思う。それくらい、教室という空間は社会の中で異質だ。

 大学生の頃、成人式を迎えるタイミングで、たまたま自分の中学の卒業式の動画を見た。誰かがYouTubeに上げていたのだ。式の後、校舎から出てくる列の中に自分が一瞬だけ見えて、ドキッとした。怯えた顔でキョロキョロとまわりを見ていて、見るに耐えなかった。たった5年前のことなのだ、と驚く。よく分からない気持ちで、実家の浴槽に浸かりながら泣いた。
 それからまた5年経って、その間にも随分人生のモードが変わったと思う。もっと楽しくなるよ、と言うかは微妙だけど、大切なものがたくさんできるよとは言える。世界が広いことを少しずつ知っている。「暗い映画が好きなんですよね」と笑って話せるようになってよかった。

ここいらが一面パーキングに変わる日を救済として待ちましょう
(2020.9)

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