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【本編】Change the World 第19章~恨む心の処方箋

生まれてから一度も他人を憎んだり、恨んだりしたことがないという人はどれくらいいるでしょう。多かれ少なかれ、他人に敵意を持つことは珍しいことではありません。そして、他人を恨むときにはある特定のパターンがあります。

「アイツだけは許せない」「アイツがあんなことをしなければ」「アイツのせいでこんな羽目になった」「アイツさえいなければ」。なぜそのように他人に恨みを持ってしまうのでしょう。

他人に恨みを持っているときというのは、大抵の場合は自分にとって「うまくいっていない状況」があるときです。逆に考えて想像してみるとよくわかるのですが、現状になにも不満がないときというのは、他人を恨む理由も特にないのではないでしょうか。

もちろん、日常の些細な場面で他人によって不快な気持ちになることはあるでしょう。けれど、あなたの人生が順風満帆で幸せに溢れているのなら、他人を恨む種となるものもないのです。

そんな恨みの矛先は両親や兄弟、あるいは近しい親族であることもあるし、学生時代の同級生や職場の上司や同僚であったりと多岐に渡ります。しかし、共通しているのは「その人のせいで何か人生でうまくいっていないことがある」という恨みの種があることです。

「両親が厳しかったから」「同級生たちに無視されていたから」「理不尽な上司だから」といったように、なにかうまくいっていないことの原因を、他人に見出だして「アイツのせいだ」と決め付けるわけですが、さてその原因は本当に真実なのでしょうか。

他人を恨まないに越したことはない、そんなことはわかっている。だけど、アイツだけはどうしても許せないんだよ。そんな苦しい思いをしている方も、中にはいるでしょう。

または、このように感じている方もいるかもしれません。「他人を恨むような汚れた心の在り方では願望は叶わない」と。なるほど、願望実現に関する書籍や記事の中には、愛に溢れた聖人を目指すかのように受け取れる表現もあります。

しかし、他人に怒りを感じたり、恨みを持つことはご法度ではありません。むしろ「怒ってはいけない」「人を恨んではいけない」「愛に溢れた人間でなくてはならない」と自分に制限を与える方が、よっぽど不健全です。

まずは難しく考えずに「他人を恨んでいるとき」と「人生でうまくいっていないことがあるとき」はイコールで結ばれているということを認識しておいてください。

恨んでいる人がいたり、自分の現状を誰かのせいにしたくなったら、何かうまくいっていないことがあるサインです。そのときに、他人を恨んでしまう自分を責める必要はありません。そのかわりに、なぜその人を恨むのかということを自身に問いかけてください。

あなたの現状において、その人によって悪影響を受けている何かがあるはずです。それは人間関係かもしれないし、恋愛関係かもしれないし、経済問題かもしれません。その人が関与しなければうまくいっていたはずの何かです。

こんな場面で考えてみましょう。あなたが長年勤めてきた会社が業績不振に陥りました。やむを得ず人員整理が行われ、あなたは解雇されます。「こんなに長く勤めてきたのに」「これからの生活はどうなるんだ」。怒りや不安が織り交ざった複雑な感情が湧き上がるでしょう。

その後のあなたに二つのルートがあったとします。一つは、憧れていた職業に就けたり、事業を興して成功するなどの「うまくいったルート」。もう一つは、解雇されたときの不安が的中して不安定な生活を余儀なくされている「うまくいかなかったルート」です。

解雇された当初に抱いていた怒りや不安は、どこかに向いていたはずです。解雇を決定した経営者に矛先が向くかもしれないし、直属の上司や人事権を持っている者に向かうかもしれません。あるいは、会社に残る者に対して恨み節のような感情を抱くかもしれません。

その恨みの感情が消えるか継続するかは、その後のあなたの状況に左右されます。あなたの状況がその後「うまくいったルート」に乗り、会社勤めをしていた頃と比べて時間的にも経済的にも自由を手に入れたのなら「あのとき解雇されて逆に良かった」とか「あの解雇があったから今の自分が在る」と振り返るでしょう。

これが、「うまくいかなかったルート」に乗ったのならどうでしょう。「アイツらが解雇したおかげで苦労している」「生活が苦しいのはアイツのせいだ」などと恨み節が出てくるでしょう。繰り返しになりますが、人を恨むことが悪いことであると言っているのではありません。

解雇という当初の状況は同じであったにも関わらず、その後の展開によって真逆といってもいい感情になるということを確認してほしいのです。他人に恨みを持っているときは、何かがうまくいっていないときである、という意味がわかったでしょう。

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