【連載版】Change the World 第21話〜自分の幸せを諦める【無料】
「幸せだ」「完璧だ」「愛してる」。これらを対象を絞らずに呟いてみます。これらの言葉を呟くと、エゴは「なにが?」「誰が?」と対象を知りたがりますが無視して構いません。例えば「豊かだ」と呟くと、「どこが?」と即座に否定が入ることはよくあります。
対象を指定すると否定や抵抗になりやすいので、あえて対象は指定しません。もしくは対象を大雑把に世界としてしまいます。「豊かだ」「どこが?」「世界が」というわけです。もしあなたが世界、つまりは自分以外を豊かだと認めたら、あなたもまた豊かです。なぜなら、あなたは豊かな世界の住人になるからです。
可愛い世界でも、幸せな世界でも、平和な世界でもなんでも構いません。あなたが自分以外に対してそうした認識をすれば、あなたはその世界の住人となります。あなたが今、不幸せと感じているとします。それ自体は構わないし仕方がありません。けれど、それを理由に自分以外の幸せを認めたくない、許したくないとなっているなら、それは勿体無いことです。
あなたが優しい世界を創ったら、あなたは優しい世界の住人です。あなたが願い事が叶う世界を創ったら、あなたは願い事が叶う世界の住人です。世界に対する認識を変えたら、世界はあなたの認識通りの世界になります。
「美しい世界だ」または「世界は美しい」。これは概ね同意できると思います。しかし、「概ね同意するが、一部では海洋汚染が…」とか「概ね同意するが、一部では環境破壊が…」といった反論もあるでしょう。
「平和な世界だ」または「世界は平和だ」。これはどちらかというと反論の方が先に出てきそうです。「概ね平和だとは思うけど、関係の良くない国もある」とか「大体の国は平和だけど、戦争をしている国もある」といった具合です。個別の案件を持ち出し、対象を絞ると認めにくくなってしまうのです。
違う例を挙げてみましょう。「みんな幸せであってほしい」と願ったとします。しかし、「でもアイツだけは幸せになってほしくない」という人が一人いるとします。これもまた個別の案件を持ち出すと認めることが難しくなる一つの例です。
最も簡単な方法は、何もかも、一切合切、何でもかんでも幸せであっていいという認識です。自分も自分以外も丸ごと、全部、何もかもです。自分以外の幸せを願い、許し、認め、認識する。それは結局自分のためです。恩返しや見返りがあるからではありません。
日本には「情けは人のためならず巡り巡って己が為」という言葉があります。これを、親切にするといつか見返りや恩返しがあるという文脈で読み取っている人は誤読です。情けは自分のためにかけているのには違いありませんが、直接的な恩が返ってくるからではありません。自分がいる世界を丸ごと優しい世界にするために、自分以外に情けをかけるというわけです。
「幸せだ」その言葉に対して個別の案件を持ち出して、他人の幸せを許さず、自分の幸せを認めない。それらは全てエゴによる抵抗です。なぜ抵抗するのかということを論じても仕方がありません。エゴは簡単には幸せを認めない頑固者なのです。
それがエゴの習性です。幸せだけでなく、豊かさや愛されていること、裕福だとかモテるということ、どんな願望の要素も簡単には認めません。意地悪に感じるかもしれませんが、そうではなく極めて慎重で、気を抜くな、努力を惜しむなという論調であるだけです。
なんだか人生の鬼コーチのような存在がエゴなのです。そのような性質ですから、あなたが「幸せだ」と呟いても簡単には首を縦に振ってくれません。いつまでエゴコーチのスパルタ人生を歩むつもりでしょうか。そのコーチに従ったところで、今までうまくいった例があったのでしょうか。
あなたの幸せを認めていないのは、世界中探してもあなたの中に棲みついているエゴだけです。願望とはつまり、エゴによって作られた幸せのハードルです。「これを越えられたら幸せと認めてやろう」というわけです。しかし、叶ったとしてもやはり簡単には幸せと認定してくれません。正確には、一時的には認定されますが直ぐに「なにかが足りない」とまた新しいハードルが設定されてしまいます。
エゴが抵抗するときの論調は決まって同じです。個別の案件を持ち出して、それを根拠として認識を却下します。エゴは極めて限定的な視野しか持っていないのですが、あたかもそれが現実の全てであるかのように振る舞います。
それはある種のニュースやドキュメンタリーに似ています。例えば、貧困を取り上げたニュースがあるとしましょう。失業し再就職の目処も立たず、いよいよ借りている部屋を出なければならない人を取り上げたニュースです。そうした人を一人二人取り上げ、おまけに「これがこの国の現状だ」などとご丁寧にナレーションなんて付いていると、この国には大勢の失業者がいて明日の生活もままならない人ばかりのように映ります。
しかし現実は違うでしょう。そのような人がいる一方で、豊かに暮らしている人もいることは明確です。これは一面だけを見てしまうと事実誤認が起こる一つの例です。エゴが語る個別の案件はこのような印象操作と大差ありません。
そもそも、不幸せと感じるのも貧しいと感じるのも比較対象がいるから可能なのです。あなたが不幸せだと感じるためには幸せな人が必要だし、貧しいと感じるためには豊かな人が必要です。よって、あなたの世界には幸せな人も豊かな人も存在します。
世界が貧しいのではありません。「自分視点から見た世界」が貧しいのです。逆に言えば、「自分の」とか「自分が」といった「自分」の概念が外れたら世界が幸せであるとか、豊かだといった認識を否定できなくなります。「自分」というのもまた個別案件というわけです。
個別案件はエゴの格好の餌です。それを根拠に認識への抵抗を行います。逆に言えば、個別案件という例外がなければ、エゴは抵抗することができなくなります。例えば「世界は幸せな場所だ」と認識しようとしたとします。そこでエゴは「いやいや。世界には不幸な人がたくさんいる。例えば…」という個別案件を持ち出して否定しますが、そんなことを言い出したらキリがありません。
世界中の幸せな人と不幸せな人の比率が逆転するまで世界が幸せであることは認めないとでも言うのでしょうか。そもそも、そんなことをどうやって確認すればいいのでしょう。
エゴの主張は一見すると現実的に見えますが、実際には極めて非現実的なのです。「自分」を含めた個別案件を根拠とした主張は全て無意味です。言い出したらキリがないし、目の届く範囲が極めて限定されている以上、確かめようがありません。
ここでウルトラCを伝授しましょう。「自分の幸せを諦める」。これがあなたのやるべきことです。「自分の幸せを諦めよう」。どう感じたでしょう。きっと悲壮感が漂ったでしょう。「絶対に嫌だ」という抵抗が生じたでしょう。
実は「自分の幸せを諦める」という主張に対して起こった抵抗の強さは、あなたの「私は不幸せだ」という認識の強さと同じです。あなたが「私は不幸せだ」と思っていればいるほど幸せを諦めることへの抵抗は強くなります。
「自分の幸せを諦める」。悲壮感、絶望感、強い抵抗の一方で、どこか肩の荷が下りた感覚はないでしょうか。もう幸せになるために現実と闘わなくてもいいのです。人生を戦場のように生き、もがき続けてきた人はもうそろそろ休んでください。あなたは現状維持のまま、幸せにならなくていいのです。寂しさの片隅で、どこかでホッとする感じや、開き直った清々しさが微かにあるはずです。
あなたはすごい人である必要はないし、目を見張るような実績を残さなくてもいいのです。偉人である必要はないし、注目に値する人物でなくてもいいのです。見た目が優れている必要もなければ、立派な肩書きもいらないのです。強くある必要もないし、愛されていなくても構いません。なぜなら、それらは全て「幸せになるために」あなたが思い付いた戦法だからです。
あなたが「幸せになることを諦める」と宣言すると、猛烈な反発が起こります。あなたは幸せになることを、文字通り諦めることができないのです。あなたはそれでも気付きません。自分で「現状は幸せではない」と宣言していることに。幸せを諦めようとするときの猛烈な反発は、裏を返せば現状は不幸せであることを強く認識しているということです。抵抗の強さは不幸せという認識の根深さでもあります。
幸せになることを諦めると、ずっと続けてきた幸せとの闘いに終止符が打たれます。あなたは気付いていなかったでしょう。あなたにとって幸せは敵だったのです。まさかと思うかもしれませんが、幸せに対するあなたの扱いは、まるで敵を迎え撃つかのような姿勢だったのです。幸せの存在を認めず、幸せと仲良くしている人を敵視する。もし幸せを擬人化したとしたら、とても良好な関係とは言えないでしょう。
あなたは幸せを難攻不落の要塞のように扱っていないでしょうか。どうすれば攻略できるかと考えてはいないでしょうか。手を変え品を変え、様々な作戦を試してはこなかったでしょうか。こうすれば攻略できるかもしれない、ああすれば攻略できるかもしれないと頑張ってこなかったでしょうか。
それは容姿を整えようとしたり、能力や魅力を高めようとしたり、収入や地位を上げようとすることではなかったでしょうか。それらは全て「幸せ要塞」を攻略するための手段だったのです。幸せになることを諦めるとは、幸せと闘うことをやめるということです。
幸せは難攻不落の要塞ではないのです。その牙城を崩して幸せをこの手で掴むことを夢見てきたかもしれませんが、それでは丸っきり敵に挑むような扱いではありませんか。幸せは掴み取るものでも攻略するものでもありません。なにかをしなければ幸せにはなれないという闘いを終結させるのです。
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