見出し画像

「ガイア理論―地球は生きている」を今あらためて考える

「ガイア理論」をご存じでしょうか?

地球と生物が相互に関係し合い環境を作り上げていることを、ある種の「巨大な生命体」と見なす仮説です。

1960年代にイギリス人科学者ジェームズ・ラブロック氏により提唱された仮設になります。

ジェームズ・ラブロック氏はマンチェスター大学で化学を学び、その後アメリカではハーバード大学などで研究をおこなっています。アメリカ航空宇宙局(NASA)に大気学者として勤務していたころに、ガイア理論を提唱しています。地球をひとつの生命体として捉え直し、ギリシャ神話の女神の名になぞらえて地球をガイアと呼んでいます。

ガイア理論では、地球があたかもひとつの生命体のように自己調節システムを備えているとしており、地球環境に対して人為的な介入を行うことについては、全体的な何かに配慮したうえで判断をすべきだとしています。

当初は理解されませんでしたが、次第に賛同者を得て、ガイア理論に当初は否定的だった科学誌『Nature』も、やがてこの説を評価するようになり、1990年代以降には、公式に認められたといってよいような状態になっています。

またジェームズ・ラブロック氏は温暖化について、21世紀末までに温暖化が進み、世界のほとんどの土地が居住不可能になるだろう「私たちは、残された時間が少ないことを理解する必要がある。各国は可能な限り文明を保持するために資源の最良の使用法を見つけなければならない」と言われています。

今、地球で起こっていること

こちらの動画は1992年、リオデジャネイロで行われた地球サミットでのセヴァン・スズキさんのスピーチです。(教科書に載るなど反響が大きく伝説のスピーチと言われています)

あれから30年、スズキさんのスピーチは現在の私達に向かって話されているようです。そうです、私達は30年間変わることができなかったのです。あのときの少女の訴えに応えることができなかったのです。

彼女はスピーチの中でこのように言っています。

『私はまだ子どもですが、ここにいる私たちみんなが同じ大きな家族の一員であることを知っています。そうです50億以上の人間からなる大家族。いいえ、じつは3千万種類の生物からなる大家族です。国境や各国の政府がどんなに私たちを分けへだてようとしても、このことは変えようがありません。私は子どもですが、みんながこの大家族の一員であり、ひとつの目標に向けて心をひとつにして行動しなければならないことを知っています。私は怒っています。でも、自分を見失ってはいません。私はこわい。でも、自分の気持ちを世界中に伝えることを、私はおそれません。

 私の国でのむだづかいはたいへんなものです。買っては捨て、また買っては捨てています。それでも物を浪費しつづける北の国々は、南の国々と富をわかちあおうとはしません。物がありあまっているのに、私たちは自分の富を、そのほんの少しでも手ばなすのがこわいんです。

 カナダの私たちは十分な食べものと水と住まいを持つめぐまれた生活をしています。時計、自転車、コンピューター、テレビ、私たちの持っているものを数えあげたら何日もかかることでしょう。

 2日前ここブラジルで、家のないストリートチルドレンと出会い、私たちはショックを受けました。ひとりの子どもが私たちにこう言いました。 「ぼくが金持ちだったらなぁ。もしそうなら、家のない子すべてに、食べものと、着るものと、薬と、住む場所と、やさしさと愛情をあげるのに。」 家もなにもないひとりの子どもが、わかちあうことを考えているというのに、すべてを持っている私たちがこんなに欲が深いのは、いったいどうしてなんでしょう。

 これらのめぐまれない子どもたちが、私と同じぐらいの歳だということが、私の頭をはなれません。どこに生れついたかによって、こんなにも人生がちがってしまう。私がリオの貧民街に住む子どものひとりだったかもしれないんです。ソマリアの飢えた子どもだったかも、中東の戦争で犠牲になるか、インドで物乞いをしていたかもしれないんです。

 もし戦争のために使われているお金をぜんぶ、貧しさと環境問題を解決するために使えばこの地球はすばらしい星になるでしょう。私はまだ子どもだけどそのことを知っています。』

相変わらず私達は手放すのを恐れています。分かち合いより、自分さえよければよいという考えが、今の状況を引き起こしています。

ガイア理論から60年

ジェームズ・ラブロック氏の日本語で読める著書としては、1984年に『地球生命圏―ガイアの科学』が出版されて以降、いくつかの書籍が出されていますが、最新作として2020年に『ノヴァセン』が出版されました。
1960年にガイア理論が発表されてから60年、2020年に出版された当書籍では地球と生命の未来について新たな未来像が構想されています。

過去、ラブロック氏は「環境破壊という過ちを、人間は正すことができるか」という問いに対して、基本的には悲観的な意見で、「ほぼ無理だろう。地球温暖化による最初の深刻な大災害が起きるまで、私たちは何の対策も行わなかった。人間の文明は失われるだろう。しかし地球と、動物としての私たち人間は生き残る」としています。

当時からガイア理論には、非科学的だと批判的する意見が多くありました。また現在でも依然としてそういった意見はたくさんあるようです。しかし、公害問題といった産業的側面が強かった環境対策が、ガイア理論の登場によって地球環境に対する意識が変わり、現在のような地球規模での環境活動に発展していったといわれています。
そういった側面においては、地球という大きな生命体のなかで人間も自然の一部であるということを私たちはガイア理論から学んできているのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?