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話している途中で「スィーーー」という音を出す人が超気になります

すべては一人の先輩から始まった

その音が気になるようになったのは、職場にいる先輩たちのこんな会話を聞いたときからだった。

先輩A「プロパーから今週中に30機能分前倒しで開発進めて欲しいって言われちゃったんだけど…進捗どうなってる?」

先輩B「遅延気味ですね…」

先輩A「理由は?課題とか把握してる?」

先輩B「はい。ただ、こちらというより他チームのほうに原因があるんで、いまちょっと確認中でして…スィーーー…まだ回答来てないんですよぉー」

先輩A「なるほど、回答くるまで作業ストップしちゃう感じ?」

先輩B「そうですね…いまは先に別作業進めてもらってますー…スィーーー

こんな具合である。

この「スィーーー」というのは、
「イ」母音の口で息を吸った場合に出る音のことを指している。

スィーーーは伝染る病

はじめは1人の先輩(上記の先輩B)だけが頻発させていただけだった。ところがいつの間にか周囲へ伝染していき、この「スィーーー」を多用する人間がオフィス内に増殖していってしまったのだ。

こうなると、1日に何度も、さまざまな人間からこの「スィーーー」を聞かなければならなくなった。

オフィスというのは学校とは違って、みんな静かに座っているわけではない。至るところで仕事の会話が繰り広げられているので、常にざわついているものだ。ただそのざわつきは何故か心地よいもので、集中力の妨げにはならない。心地よいざわつきの中に時折姿を現す「スィーーー」というのは、穏やかに流れる川を眺めていたら突然サケが飛び跳ねた、みたいな驚きに近い。「あ!」と脳みそがいちいち反応してしまう。あの憎き「スィーーー」は思いのほか目立つのだ。4、5人のミーティングのときに私以外のメンバー全員が「スィーーー」を使用しているなんてこともあった。

私という人間は、一度気になってしまうとそればかり聞こえてきてしまうタチなのだ。米津玄師の『Lemon』に定期的に差し込まれる「ウェッ」にもハマって苦労した。

テレビからも聞こえた「スィーーー」

最近、一日中自宅にいる生活をしている。
昼間のワイドショーをつけたままにしていたとき、2人の男性MCがこの「スィーーー」を乱用していることに気がついた。

恵俊彰と宮根誠司である。

別に名前を出してもいいと思ったので出すが、この2名は、新型コロナウイルスの話題や政治の問題のときなどによくスィーーースィーーー言っているのだ。
他の番組も注視していると、どうも「スィーーー」を使用しがちなのは男性に多いことにも気がついた。多いというか、いまのところ女性で「スィーーー」という音を出した人は見たことがない。使用者は100%男性だ。

「スィーーー」とは何なのか

そもそも「スィーーー」とは何の表現なのか。
また、どうしてあんなに伝染したのだろうか。

まず、すべての始まりである先輩Bが頻発させていたのは、ただのクセというだけだろう。先輩Bの「スィーーー」の使用パターンは、少なくとも2種類あった。

①「難しい」とか「苦しい」という感情表現としての利用
②「こっちとしても出来る限りのことはやってるですよー」という訴えかけ

後輩との会話では①、目上との会話では②がよく使用されていたように思う。
無味乾燥なビジネスの会話の中にこのような感情の乗った表現が入ることによって、なんだかより良く状況が伝わるような気がする。より人間的な会話となって関係構築に役立つ。そんな効果がありそうな気がする。

ワイドショーのMCがゲストの専門家に質問したり意見を促すときに使用するのも、「非常に難しい問題ですよね」とか「本当に政府は何をやっているんでしょうかね」という気持ちを表すためではないだろうか。なんだか ”ちゃんとやってる感” も出せるし、何よりテレビ番組は視聴者に見てもらわなければ意味がないので、「視聴者の気持ちに共感してみせる」みたいな効果があるなら、「スィーーー」は便利なのかもしれない。

ではなぜ周りに伝染したのだろうと考えたが、これについては職場の状況が関係していそうだ。
システムエンジニアとして働いていれば一度は経験することだと思うけれど、「やるべき仕事量に対して工数が少なすぎるうえに前工程での問題が多く手が止まりがち」という状態だった。こういう時は、みんな何かにつけて”誰か”のせいにしたい。実際、問題は常に”誰か”のせいなのだ。だから同僚と相談するときや上司に報告するときは、この”誰か”がボトルネックなんですと、悪く言えば言い訳してみせたりする。こういうとき、「スィーーー」は便利だったのかもしれない。これを使うと、相手は「まあ、大変だもんね」という気持ちになる。まあ、私にとっては耳障りなだけだったけれど。

最後に

ただ気になったからといって、どうしようもない記事を書いてしまった。
読んでくださった人がいるなら、ありがとうございました。

これをきに、他人の「スィーーー」が気になる生活になってしまったら申し訳ない。でも大丈夫です。1か月もすれば愛せるようになります。

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