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カナダに来た!⑱ LINE電話・・・

 
カナダに来たばかりの頃、兄から3日に1度はLINE電話がかかってきた。その時、父と母とも顔を見ながら話すことができた。だんだんと、1週間に1度になり、2週間に1度になり・・・そして、最近1ヶ月くらい電話がなかった。私は、もしかしたら・・・と思った。父は、90歳で前立腺がんの治療を受けている。足腰も弱くなり、杖を使っている。でも、食欲はあるし、大好きな庭に出て草木の手入れをしたり散歩をしたりしている。数か月前から言葉がなかなか出てこなくなった。頭はしっかりしているのだが・・・本人は、思うようにならなくなった身体にストレスを感じているだろうが、LINE電話で見せてくれる顔はいつもにこにこをしていた。電話がこなくなって「もしかしたら父が・・・」と思った。何かあっても、たぶん、カナダに一人でいる私を悲しませないように、連絡をしてこないのではないか。兄や姉にメールをして確認してみようか・・・でも、怖かった。カナダ行きを決めた時、そういうこともあり得ると覚悟をしたつもりだった。でも、実際に悲しい知らせを聞いたら、どうなってしまうのだろう。学校へ行けるのだろうか・・・一人で生活できるのだろうか・・・でも、もしかしたら、そうなのかもしれない・・・考えただけでも涙が浮かんだ。年老いた父と母を残してカナダに来たのだから、自分で覚悟を決めて来たのだから・・・と言い聞かせた。カナダへ来る前に、母が、「お葬式には帰ってこなくていいからね。」と言っていた。
 ”死は、肉体がなくなるだけ、魂は永遠”という考えをもっている私。だから、会えなくなるのは寂しいけど、消えてなくなるわけではない。また、姿を変えてどこかに存在するかもしれないし、心の中にはずっといる。だから、大丈夫・・・と思っていたのに、実際に想像すると、やっぱり悲しい。そんなことを思っていた今日この頃・・・昨夜兄から久しぶりにLINE電話がきた。いつもと変わらない兄の笑顔。「あ~もしかしたら、父のことの報告があるのかも・・・」と思いドキドキした。「元気か~?」としばらく会話をした後、「おふくろに変わるね」と。「ふみちゃん、元気?」と母の笑顔。その後ろに父が見えた。あぁ・・・よかった・・・涙をこらえるのに必死で作り笑いをしながら母と会話をし、父に手を振った。いつもの父の笑顔だった。感謝・・・

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