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【日刊ドローン情報 No.182】【DRONE FLIGHT SAFETY】Vol.3 航空機パイロットが解説!ドローンの運航に必要なCRMスキルとは何か-ドローンのライセンス制度に取り入れられるCRMスキルを解説-

 12月より施行される「無人航空機操縦者技能証明」の制度。すでに国土交通省より「無人航空機の飛行の安全に関する教則」が公表されていますが,この中に「安全な運航のための意思決定体制(CRM等の理解)」という項目があります。そこで,CRMとはどういったものなのか,簡単にまとめてみました。

CRMとは?

 CRM(Crew Resource Management)とは,航空分野で開発された概念で,安全な運航のために利用可能なすべてのリソース(人的資源や情報など)を有効活用するという考え方のこと。もう少しかみ砕くと,機長の操縦技術や機長一人のリーダーシップに頼るのではなく,乗員間のコミュニケーションや,チームとしての意思決定プロセスを適切に管理することで,ヒューマンエラーを防止する取り組みのことです。
 当初,航空会社のコックピット内コミュニケーションやリーダーシップ,意思決定に焦点があてられてきたが,その後航空業界だけでなく,ヒューマンエラーが安全に大きくかかわる医療,海運,原子力発電などの分野にもCRMの考え方が広がりました。
 なお,CRMについての唯一の定義はないようですが,カナダ運輸省では以下のように定義しているようです。

CRMとは、安全で効率良い運航のため、一人一人の乗員や航空機のシステム、援助施設とその人員を含めた全てのリソース(資源)を効果的に利用することである。 CRMの目的は、関係する乗員のコミュニケーション、相互作用、人的要因、マネージメントスキルをより高めることである。 そして、乗員のパフォーマンスのうち、ノンテクニカル・スキルの側面を重視するものでもある。

Wikipedia「クルー・リソース・マネジメント」

なぜCRMが必要なのか?

 現場作業においては,労働災害の防止のために,作業前に危険予知を行い,大きな災害となり得る要因を事前に把握し,その対策や作業時の行動目標を定めますが,このエラーを誘発する要因のことを「スレット(Threat)」といいます。航空機の運航などのように,チームで運用を行う際,機長のようなリーダーが一人でこの「スレット」や「エラー」の発生を把握することが困難であり,適切な対応が取れないことで事故等につながるおそれがあります。
 このため,関係者間でスレット(気象変化,疲労,機材不具合など)の発生状況を早期に把握・管理し,万が一,エラーが発生しても事故に至らないように対処する必要があります。

CRMを機能させるためには

 このCRMを機能させるためには,状況認識,意思決定,ワークロード管理,チームの体制,コミュニケーションといったノンテクニカルスキルが求められます。これらの能力を身に付けるための日常的な教育や訓練が必要ですし,日頃の業務において,これらの項目が自然に確認されるような体制や仕組みの構築が必要です。

まとめ

 今年12月には航空法が改正され,ドローンのレベル4飛行が可能となります。レベル4飛行を行う際もそうですが,今後は操縦者,補助者,監視者,プロジェクト責任者,運航計画作成者など,さまざまな役割の人員がチームで業務を行うことが多くなると想定されますし,その全関係者が適切にコミュニケーションをとり,スレットを見逃さずに対処することが,安全運航のために必要となります。

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