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金融マンがVTuber企業に転職する話

初めまして、つい最近になってVTuber企業に転職した元金融マンです。
一昔前は密かに流行っていたVTuber界隈もいまや大手2社が上場し、かなり一般にも認知されてきたのではないかと思います。
そんなVTuber業界に金融キャリア一本で参戦した話を転職活動もひと段落してちょっとゆとりもできたので、つらつら書いていこうかなと思います。

転職のきっかけ

まず私は5年ほど金融キャリアを歩んできて、世間一般にはどちらかというと堅い仕事をしてきたと思います。企業の資金調達に関する仕事です。
その傍で個人的にMMD動画を作ったり、Vの配信を見るオタクではありましたが、好きは好きでもこれを仕事にするとは全く考えていませんでした。

真剣に考えるようになったのは、去年の冬コミでVのコーナーがかなり賑わっていた印象を受け、何気なくにじさんじを運営するANYCOLOR社の開示資料を見た時です。設立から上場までのスピード感と合わせてビジネスモデルや収益構造を見てVTuber業界に興味が湧きました。
それまでは企業としてしっかり向き合ったことはなくて、どこまで行っても動画の広告収入や物販などの既存プラットフォームに乗ったビジネスだと漠然と思っていたのです。

VTuber事業について調べてみた

実際のVTuber事業の収益構造は、大別して①ファンコミュニティ(スーパーチャット、メンバーシップ、アドセンス広告)、②プロモーション(企業案件、協賛)、③グッズ・デジタルコンテンツ販売、④イベント(ライブ等)となっています。
新興マーケットながら分散の効く収益構造になっていて、利益を積み上げてよりリッチコンテンツをリリースしていく手堅い構造になっているのだと理解しました。
所属タレントの3Dモデルやイラスト等のライセンスは企業に属しており、演者(中の人)には所属プロダクションを離脱するインセンティブは基本ありません。ここが通常の芸能プロダクションとの違いだと感じました。実際、にじさんじのタレント達は高いリテンション率を誇っています。

市場の成長性に関しても、ホロライブのカバー社が今年3月に上場しましたが、ANYCOLOR社と同水準の売上規模(100億円超)ですでに安定した黒字体質を築いているように見えます。
また、世界的にメタバースの発展が囁かれているなか、各社ともに開示資料でも言及しています。

業界的なターニングポイントとしては、YouTubeの広告規約や仕様の変更(広告費用の効率化による単価の低減など)、ユーザーの消費性向の変化等が考えられます。
ただ、これらは正直顕在化するタイミングも可能性も想定することが困難なので頭の片隅に置いておく程度でいいと思っています。

VTuber企業の大事なとこ

業界特性として最も考えておかないといけないのは、むしろその企業のコア・コンピタンスだと思います。
先ほど挙げた2社だけでも、企業特性が割と異なります。タレントの所属数ではにじさんじが圧倒的に多く(ホロライブの約2.5倍)、豊富なタレントとそのタレントを育成するアカデミー事業などプロダクションとしての認知度向上施策を軸にしている印象です。
一方、カバー社はメタバース領域を含む自社開発に注力しつつ、既存タレントのファンコミュニティ拡大を目指している印象を受けます。
それぞれ所属している各タレントの認知度やファン数などバラツキはあるものの、プロダクションが先か個別のタレントが先かの差があるのではないかと思います。

プロダクションの認知度の話をしましたが、その文脈でいうとこの業界は新規参入が厳しいと思っています。
なぜなら、所属を希望するタレントも有名になるためには大手を受けるのが当然の選択で、業界としては寡占化を避けられないからです。
2017〜18年あたりの一昔前の戦国時代ならともかく、いま新規参入する企業で勝ちの目があるのは基本的に大手の資本が入っている子会社やジョイントベンチャー等のタレント獲得に優位性を持つポジションのみだと思います。
というのも、演者としてタレント自体の魅力は大きいですが、コンセプトデザイン含むイラストやLive2D、3Dモデルの作成、機材などにはある程度の予算が必要で、動画や配信等コンテンツの企画力もクリエイターや構成作家の有無は大きいと思います。その課題感の解消を外部に委ねるのが企業勢なのであって、タレントとしてもその起業サポートを充分に受けられないなら、制約の少ない個人勢としてやっていく選択肢も考慮するのではないかと思うからです。

実際に動いてみて

ここまで長々と業界の前置きを話してきました。
ここからは本題の金融キャリアがVTuber業界としてどういった印象を受けるかについてですが、正直なところ全然いい印象は持ってもらえません。
まずエンターテイメントでもない異業種の時点で難しいですが、人を楽しませるエンターテイメントと真逆の堅いイメージである金融はカルチャーフィットをとても気にされます。
ビジネス職として応募しているので、応募資格は充足しているものの、ほぼポテンシャル採用のようなものです。なので、キャリアの軸や転職の動機、業界への興味や趣味嗜好などを入念に確認されました。
もともと企業分析が趣味みたいなところもあるので、志望理由を考えることは苦ではないのですが、業界への興味と将来性への期待、それと好きなことをやるというモチベーションが合わさって動機になるという説明に説得力を持たせるのがひと苦労でした。
個別のタレントへの熱意だけでなく、業界をどう盛り上げて行きたくて自分はそのなかでどのような役割を果たしたいのか、新興マーケットで人材価値も不安定だからこそ、その軸が他の職種よりも重視されている印象でした。
選考期間中はVのことを考える時間が自然に増え、気づけば以前より配信や動画を見るようになり、部屋にはグッズが溢れていました。

つまりは人間力

結果的に、タレントと直接関わる可能性のある職種の場合は人格をかなり入念にチェックされるということと、長期的に在籍する動機やメリットがあるのかを確認されているということだと思います。
それこそマネージャーならタレントのメンタルケアも仕事のうちで精神的にタフかどうか、コミュニケーションの取り方に問題はなさそうか、そして辞めなさそうか、当たり前のことではあるのですが、たぶん中途はここが一番念入りに確認される気がします。

正直な話、ビジネススキルは平均的なものがあれば問題ないと思っています。それよりもパッションを上手く言葉にして伝えられるか、それが相手に響くかが勝負だと思いました。

おわりに

VTuber企業に就業しようとしている人の参考になればいいと思ってはいますが、結構バイアス入ってる内容かなとも思うので、いま一度ご自身の考えを整理する機会になれればいいなと思います。
読んでもらえて感謝です。

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