自由度の高いディスカッションを時間内にまとめる準備のポイント
Scrum Inc. Japanで人事兼アジャイルコーチとして活動しています、庭屋と申します。アジャイルの考え方の中で、人事の仕事でも活用できそうなものをお伝えしていきます。
仕事の中で今後の活動方針を決定するようないわゆる「自由度の高いディスカッション」を取りまとめを行う場面が発生します。
(人事の方は、よく事務局的なポジションになることが多いですよね)
メンバーが自由に意見を出し合いながら、かつ時間内に成果を出すのは簡単ではありません。場の雰囲気を大切にしながらも、会議の目的を見失わないためには、事前準備がカギになります。ここでは、ディスカッションの質を高め、無駄なく進行するためのポイントを6つ紹介します。
1. 会議の目的を明確にする
まず大事なのは、「このディスカッションは何のために行うのか」を明確にすることです。メンバーを招集する際にも、以下の2点を伝えましょう。
会議の目的:「この話し合いで何を達成するのか」
自分の役割:「参加者は何を求められているのか」
参加者が「何のために呼ばれているのか」「自分がどんな貢献を求められているのか」を理解していないと、発言が的外れになったり、意見がまとまらなくなりがちです。招集時に目的を共有し、自分の役割をしっかり認識してもらいましょう。
2. 最終的なアウトプットを設定する
ディスカッションを始める前に、「成功のゴール」を明確にすることが大切です。例えば、
「〇〇の改善策を3つ提案する」
「次回までに進める具体的なアクションを決める」
このようにアウトプットの形式や基準を決めておくと、会議後に「結局何も決まらなかった」という事態を避けることができます。ゴールが共有されていると、参加者も「何を目指して話せば良いか」が明確になり、議論がぶれにくくなります。
3. 時間設定を含むアジェンダを用意する
アウトプットに向かうための具体的なステップをアジェンダに落とし込みましょう。議論の基本的な流れは、
発散:意見やアイデアを広げる
収束:それらをまとめ、意思決定する
特に収束の段階では、誰がどのように意思決定するかを決めておくことが重要です。例えば、リーダーが最終判断するのか、多数決で決めるのかを事前に合意しておくと、迷いが減ります。また、時間を無駄にしないために各フェーズごとに制限時間を設け、進行を管理することも効果的です。
4. アジェンダごとの受け入れ条件を設定する
受け入れ条件とは、「このアジェンダが完了したと判断できる基準」のことです。これは、議論が発散しすぎたときに「どこで切り上げるか」を決めるための目安になります。
「改善案が3つ出たら終了」
「参加者全員の合意が取れたらOK」
こうした受け入れ条件を事前に設定しておくことで、会議中の進行がスムーズになり、議論が迷走するのを防ぎます。
※この「受け入れ条件」はスクラムを活用した仕事の進め方でよく実践される方法です。「何を達成するべきか」の認識齟齬が発生しないようにする。
過剰品質(やりすぎ)を避け、効率的に仕事を進められるようにする。などの効果があります。
5. 必要に応じた事前準備を依頼する
議論の時間が限られている場合、事前準備を依頼することで効率を高められます。特に発散フェーズは、個々の考えをあらかじめ出しておくとスムーズです。
事前に参加者から意見を集める
アジェンダの一部を事前実施する
これにより、当日は意見の共有に集中でき、短時間で深い議論が可能になります。
ここに記載している内容をもとに先日実際に実施したディスカッションの準備です。
※社内の情報がわかるような単語は修正しております。
6. 必要な場の準備を整える
ディスカッションの形式に応じた準備も欠かせません。オンラインならディスカッションボードの作成、オフラインなら付箋やホワイトボードの用意があると便利です。また、使い方を参加者に事前に伝えておくと、当日の混乱を防げます。
想定外の展開への対策も準備する
いくら準備をしても、ディスカッションが予定通り進まないことはよくあります。その場合は、次の点を振り返りましょう。
事前インプットが足りなかったのか?
目的の方向性が曖昧だったのか?
また、議論のリハーサルをしておくと、当日の進行がスムーズになります。リハーサルでは「どのような意見が出るか」を具体的(Aさんだったらこんな意見を言いそうだな。これに対してBさんはどのような反応をするかな?など)に想像し、考えられる分岐をいくつか想定しておくとよいでしょう。
まとめ
自由度の高いディスカッションを成功させるには、事前準備が何よりも大切です。
会議の目的と役割を明確にする
最終的なアウトプットを設定する
時間設定を含むアジェンダを作る
アジェンダごとの受け入れ条件を決める
必要に応じた事前準備を依頼する
必要な場の準備を整える
これらのポイントを押さえた上で、当日の進行をサポートすることで、限られた時間内に効果的な成果を出せるようになります。準備をしっかり行えば、ディスカッションの自由度を保ちながらも、ゴールへと導くことができます。
自身も正にこの型を元に実践して学んでいる最中ですが、皆様のご参考になれば幸いです。