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#手紙

【小説】狼煙

昔、ある家の暖炉の前で若い男女が寄り添っていた。
「明日、お父様のご友人の、ご子息のところに嫁ぐの。」
男は表情ひとつ変えず、暖炉の火を見つめている。
「ねえ知ってた?昔の人は、大きな火を起こして自分の居場所を知らせたらしいわ。」
暖炉の薪が炭になった部分から鈍い音を立てて落ちていく。
「私、何もかも嫌になったら、家を燃やしてしまおうと思うの。」
そうしたらあなた、絶対に私を見つけてね。
若い娘の

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