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【小説】6月17日

真っ暗な部屋でパソコンの明かりだけが光る。
『二次選考通過者』
ないとわかっている名前を探すのはこれで何度目だろう。通過者にはあらかじめメールが届いているはずなのだから、今俺が画面をスクロールしながら感じている期待にも似た感情は、全くもって意味のないものである。むしろない方がいい感情。
スクロールする手の動きがだんだんと慎重になる。もしかしたら手違いでメールが届いていないのかもしれない。もしかした

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【小説】6月16日

たとえばさ、美久の言うとおり私が色だったとしようよ。そしたらキャンバスの役目をやってくれる?心地よく息ができるのなんて、美久といるときだけだよ。ごめん、それは言いすぎかな。でも酸素がキレイな気がする。あ、笑ったでしょ。いいけど。ところでさ、世界の終わりって何色だと思う?

リズミカルな鈴の音で目が覚めた。重たい瞼をこじ開けて音の発信源を探す。スマホに表示されるいくつかの仕掛けをぼんやりした頭でクリ

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