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先逝く人の話し

前回に引き続き、重たいテーマになってしまう。
そう、私の心のうちは重たい女だ。
私のnoteだから許してほしい。私が許す。


【先逝く人の話し】
命短しなんとやら…。よく聞く話しかもしれないし知ったこっちゃない人も、ここで流し聞いてくれればいい。



今回は私の職業について絡めて綴ってみようと思う。
巷で言う、白衣の天使とかいう仕事をしている。そんな言葉は妄想、夢物語だと思っている。現場は思っている以上に戦争で、綺麗ごとでは済まされないことが日常茶飯事だ。セクハラ、モラハラ、カスハラ、マタハラ…なんでもござれ。そんな中で最も多いのが死に向き合うことだ。

個人的見解ではあるが、80~90代でお亡くなりになる方々は「天寿を全うされたんだな」と納得がいく。あくまでも個人的見解ではあるが。
最近のお年寄りはお年寄りなんて呼ぶのも失礼にあたるんじゃないかと思うくらい若々しい方もおられるので…。



さて、問題は若い方々の死だ。

表題にした【先逝く人たち】

私は配属部署が急性期だったこともあって、突然の死に立ち会うことが多かった。
もちろん若くして長い闘病生活の末に亡くなられる方もいる。ただそういった方々の多くは慢性期病棟、ホスピス、在宅でのお話しなのでここでは割愛させていただこうと思う。

突然死の多くは交通事故、自死、不慮の事故が多い。

朝「行ってきます」と手を振っていた父が現場作業中に鉄骨が落ちてきて亡くなる。

「今日会いに行くね」と約束していたのに、兄の到着を待てずに飛び降り自殺をしてしまう。


信じられないことかもしれないが、そんなケースがごまんといる。

泣きじゃくる家族、すがりついて離さない母親、行き場のない感情を医療者にぶつける父親、わけがわかっていない子供たち…

新人の頃から諸先輩方に「泣くのはあなたの仕事じゃない、家族の仕事だ」と言われ続けているから、冷静に立ち振る舞えていた。仕事では感情に一線を引くことができていたんだろう。



私には高校時代から仲の良い友人がいた。
A子とB子にしておこう。
3人で仲が良く『漫画同好会』とか名前をつけっちゃったりなんかしてよく遊んだりしていた。
青春をともに謳歌した仲間だ。

大人になってからも関係性は変わらず続いていた。
それぞれ距離も遠くなってしまって
会う頻度はぐっと減ってしまったけど、
A子の結婚式にも行ったし子供ともよく遊んでいた。
私自身のカミングアウトもなんの抵抗もなく
「ちゃむはちゃむでしょ、何も変わりないよ。それで彼女はいつ紹介してくれるの?」と今まで通りの彼女たちだった。

B子が結婚する話しになったが、コロナ禍なこともあり「コロナ落ち着いたらみんなでお祝いしよう!久しぶりにディズニー行こう!学生時代に話してた子連れディズニーの夢が叶うね」と約束していた。

約束していたんだ…。

ディズニー行きの約束はコロナが終息した今もまだ果たされていない。

A子が亡くなった


不慮の事故だった。
検索すれば出てくるような海の事故だった。
ネットで叩かれていた。

コロナ禍なのに子供を置いて遊びにいったりするからだ、と。
何も知らないネットの中の住民に好き放題言われていた。

悲しかったし悔しかった。
あんなに仕事に子育てに一生懸命なA子が、たまの休息中にあんな事故にあって死んでしまったことと、ネットで叩かれていることに腹が立った。
もう二度と会えない事実を受け止められなかった。涙が枯れても涙が止まらなかったし、心が千切れるほどだった。息ができなくなって、立ち上がれなくなった。A子の家族や子供の気持ちを思うと、心が抉られるようだった。

コロナ禍の当時、遠方なことや職業的にも県外移動が難しく、最期にも会えずじまいである。

私はA子とのお別れが出来ていない。

自分の祖父母を亡くした以外に、初めて自分の身近な大切な人が亡くなった。初めての【先逝く人】だ。

人は突然死んでしまうもので、
もう二度と会えないこともある。


仕事を通じて、何度も何度も経験し、自分の心に言い聞かせていたはずの言葉だ。
何もわかっていなかった。A子が亡くなるまで…。

距離や時間を理由にして会う機会を先延ばしにしていたが、きちんと向き合っていれば会う機会は作れたはずだ。
ビデオ通話でも良かったし、LINEでも良かったんだ。
もっと機会を作れば良かった。

会おうと思えば会えたはずだから。


A子の家族と会った。
妹があの日のこと、それからのことを話してくれた。
遺影の写真はキラキラ太陽みたいに笑うA子の写真だった。よく笑う子だった。
でもA子はそこにいなかった。

お墓参りをした。
A子には似つかわしくない、灰色のどこにでもあるようなお墓だった。
そこにもA子はいなかった。

どこにもいなかった。

事故にあった海にはまだ行けていない。
でもたぶんそこにもA子はいないだろう。


もう会えなくなってしまった。
後悔してもどうしようもないことはわかっている。
わかってはいるけれど、ふとした時にA子の顔がよぎる。
もう一度だけ会えるなら
「あなたにいつも救われていたよ。ありがとう」と伝えられたらと思っている。





今大切にしたいと思う相手
これから出会う私の大切な人たちへ



想像したくはないけれど、もしかすると私たちのどちらかが【先逝く人】になるかもしれない。
そうならないことが一番だけれど、そうなった時にA子の時のように後悔はしたくないから。

出来うる限りの大切を伝えていきたい、
会うことを大切にしていきたいと思っているよと。

ただそれだけをここに書き留めて、
私の心に深く刻んでおこうと思う。



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