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未練はないけど、たっぷりの後悔を抱えて

結婚しているときより離婚してからの方が、結婚や恋愛の相談をされることが多くなって、相談相手間違えてるでしょうよって思うのだけど、人はどうやら成功より失敗から学ぼうとするらしい。

この間も、結婚を迷っている人から「結婚生活はどうだった?」と聞かれたので「悪くなかったよ」と平坦に返し、さらに「結婚の決め手はなんだったの?」と聞かれたので「わたしが一番わたしでいれる人だったんだよなー」と答えながら、あー本当にそうだったなーとしみじみした。  

とにかく絶対的な味方だった。寂しかったり悲しかったりの日は理由を聞かずにただ抱きしめてくれて、うまくいかなくて崩れそうなときは、助けるとかじゃなく「だいじょうぶ。今までもあなたは自分で乗り越えてきたじゃない」と言ってくれた。

人の気持ちや心に対しては繊細な感覚があるのに、見た目の変化には無頓着だった彼。髪を切ってもメイクやネイルを変えても、太った痩せたにもまぁ気づかない。

あるとき「まったくなーんにも気づかないんだから」とわたしが言うと、彼は困った顔でこう言った。「わるかったよ。…でもさぁ、俺はあなたがいつかシワだらけになってもきっと気づかないよ」と。  

完敗だ。かなわねーよって思った。
もしかしたらいい訳もあったかもしれないけど、でも彼がそんな次元で生きていないことはわたしが一番よく知っている(正確には知っていた、か)。  

結婚も離婚もわたしが切り出したことだった。

別れ話の際、「あなたの気持ちはわかったよ。だけど俺の気持ちはどこにあるの?」と言った彼の冷たい石の目を忘れることはない。今でもふとした折に思い出し、今のわたしは大丈夫だろうか、自分都合になってない?と自分の心を点検する。

極めつけは「でもね、悪くなかったよ。ずっと振り回されてエンドレスでジェットコースターに乗ってるみたいな結婚生活だったけど、でも楽しかった」という言葉だった。  

未練はない。ただ吐きそうなくらい後悔はしていて、この後悔はこの先もちゃんと持っておかなきゃいけないと思った。  

離婚した今もぼちぼち連絡はとり、ときどき飲みにいく。共通の友人からは「ワンチャンあるのでは?」と冗談交じりに言われ、わたしは「あるかもね〜!」と答え、彼は「バカなんじゃないの」と呆れる。今はこの関係がちょうどよく心地よい。  

ひとつ言えることは、彼は間違いなく私を構成するひとつだってこと。わたしはそんなブレンドされた自分を結構気に入っている。

多分これからも、出会った人の数だけ、好きになった人の数だけ、苦くなったり薄くなったり濃くなったりしながらオリジナルに変化していく。

おいしい日もそうじゃない日もきっとある。おいしい日は「おいしいねぇ」と言って、そうじゃない日は「うへ、失敗失敗」とか言いながら、どんなときも味わっていけたらいいなーと思う。



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