見出し画像

読書感想文

日曜日だから休みの日でもいいかとは思うけれどそれにしてもなにもやる気が起きない。やる気が起きない日が多すぎてやる気が起きないのがデフォルトなのではとも思い始めてきた。時間はあるから本でも読むかと買ってあった本を開く。宮下奈都の『羊と鋼の森』だ。

簡単にあらすじを説明すると、北海道で暮らす高校生の少年がある日偶然ピアノの調律師に出会い、調律に魅了され自身も調律師になるという話だ。調律師になってからどのように成長していくか、が主眼だ。

この本は2016年の本屋大賞受賞作だ。本を買おうと思って本屋に行って帯が目についたから買った本。面白いだろうと期待して読み始めた。

全体的に推進力が強い本だと思った。とても読みやすい。かといって軽すぎるわけでもなく。とても心地よく読めた。

主人公の青年は透明な人だ。高校二年生のときにはじめてちゃんとピアノの音を知って、それから調律師になろうときめて努力している。下地がなく何でも吸収してしまう。真っ白な感じなんだけど、白っていうより透明だと私は思った。淡々とした語り口とか落ち着きがあるような感じ(調律の技術がなかなか上達せず焦っているが)とかがそう感じさせたのかもしれない。ただ主人公のそうした透明な感じが周りの登場人物の色を強調させている。一人ひとり個性が強い。やさしさ溢れる柳さんや永遠のあこがれの板鳥さん、素っ気ないけどやさしいところもある秋野さん、事務の北川さん、主人公の成長のきっかけとなる双子の和音と由仁。それぞれのキャラが色鮮やかに描かれるのはきっと主人公がすべてを受け入れ寄り添っているからだと思う。

読んでいて感情移入をすごくするっていうわけでもない。程よい距離感でずっといられる。だから読んでいて心地よくて情景が目に浮かぶのだろう。音って目に見えないし聞く人によって感じ方は様々だけど、きっと和音が弾くピアノの音は美しいのだろうって感じられるこの文章がとても好きだ。

私は文章って水の流れみたいなものだと思っている。流れが速すぎたり遅すぎたりしたら読みにくいし面白くない。またどこに向かって流れているのかわからないのも読んでいて辛いところがある(自戒)。この本もそうだけど心地よい速さで、しっかりと芯を持っているような文章は読んでいて気分が上がる。そんな文章を書けるようになりたい。

『羊と鋼の森』の主人公は凄く努力をしていた。ずっと勉強をしていた。私も努力をちゃんとできるようになりたい。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?