スキルの先に
時間・空間・人間
というように、時・空・人の間には何かがある。
その何かを感じれる仕事の1つがセラピストという職業だと思う。
先日、癒し人の価値観について書いた。
セラピストの基本の価値観だと思っている。
けれど、スキルを網羅し、完璧に遂行するだけでは到達できない何かがそこにある。
§
セラピスト2年目のある晩、いつものようにお客様を出迎えた。
スラッとした細身の、まだ若い男性。
どことなく影を落とした表情で、口数も少ない。
あてもなく居場所を探して、なんとなくここにたどり着いたような、なにかを諦めたような、そんな哀愁を無防備に放っていた。
わたしは声をかけることを止め、その雰囲気に同調し寄り添うことにした。
部屋の照明を落とし、薄明かりの中での施術がはじまると、身体に触れる手の感触を肌で感じながら、彼はゆっくりと眠りに入っていった。
柔らかい肌と筋肉を、なるだけていねいに触りながら、彼の心の回復を祈るように見守ることしかできないわたしの無力さを感じる。
上向きの施術が終わり、うつ伏せになって頂けるよう一声かけた。
「気持ちいいな……」
うつ伏せになった彼は小さく息を吐いて呟いた。
通じ合えていないという不安を隠し持っていたわたしは、その一言で心底安心した。
ようやく彼がわたしを認識してくれた安堵感とともに、90分の施術がそろそろ終わるという時、
彼の背中の上に白い光が浮いていて、だれかが部屋のドアを開けたのかと周りを見渡すもそんな様子はなく、
ただ彼の背中から白く大きな翼が光を放って現れたのを確認した。
いやいや夜も遅い時間、わたしもうっかり夢を見たのだと思いつつ、施術が終わり挨拶をして部屋を出た。
ゆっくり休んで、時間が彼を元気にさせてくれるといいな…と願いながら、彼を見送ろうとした時、
「握手させて貰ってもいいですか!」
と両手で強くわたしの手を握りしめた彼は、
「会えて良かったです!ありがとうございました」
と天使のような微笑みを授けてくれた。
§
彼に会ったのは、その1度だけだ。
それでも鮮明にわたしの頭に焼き付いている。
夢ではなかった。
不思議な出来事はたくさんあるけれど、今まで出来るだけ人に伝えないようにしていた。
だって、そんなの笑い話のネタでしょう。
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時は、いま、一秒、一瞬。
時間は、一瞬と一瞬が連続して繋がっていくもの。
空は、無であり、
空間は、有になる。
人は、ひとつのエネルギー。
人間は、複数の繋がるエネルギー。
何かと何かの間に繋がりが生まれ、
その繋がりを、何と呼ぶのかは分からない。
そしてその繋がりは、決して言葉で現せない。
感覚器官と心で感じるものでしかない。
§
わたしたち人間というのは、その何かを感じるために生きているのだと思う。
人間にならなければ、感じることは出来なかった奇跡だと思っている。
心で感じて生きることが、人生の目的でありたい。
わたしにとってセラピストという職業は、ちゃんとそこに気づかせてくれるツールであり、"仕"える神"事"である。