きっかけは、いつもそこに
”福井県といったら”
100人いたら100通りの考えが出るはずだが、当然同じ答えも出るだろう。
かに・ふぐ・恐竜・東尋坊…。
少し携わったことがある人は”鯖江の眼鏡”と答えるかもしれない。
少なくとも、つい最近まで私は”恐竜”と答えていただろう。
変わすとしたら…。
それは、その土地に足を踏み入れる”きっかけ”が必要なのだ。
きっかけがないと、日本家屋に訪問する機会がないだろう。
日本家屋が、こんなにも居心地と安らぎを与えてくれるとは。
すれ違う人が、あたかも知り合いかのように受け入れてくれるとは。
”福井”とひとくくりにするのはもったいない。
真冬でも、雪がない地域もある。
もちろん、数日前に積もったかもしれない。
でも、翌日には溶けてしまうこともある。
こんなにも、心地のよい天気の日だってあるのだ。
電車で20分ほど場所を離れると、雪が深い地域もある。
雄大な山に辺り一面、真っ白な雪が積もる。
そっと足で踏んでみる。
膝のあたりまで埋まってしまい、思わず足を引きあげた。
ここも”福井”なのだ。
観光地でもない、集落の中にはこんなおしゃれなカフェもある。
保育所をリノベーションしたカフェ。
外から入る日差しの暖かさ、パチパチと鳴る薪ストーブ。
都会の喧騒もない。
ありのままの自然を大きな窓から眺める。
どこか懐かしい雰囲気を感じながら
ただただ、ゆったりと。
流れる時間に身を任せて落ち着く。
都会にあるおしゃれなカフェのようだけれど
福井県の田舎町にあるからこそ、良さが出る。
”何もない”は希望と可能性の塊なのだ。
田んぼに敷き詰められた雪も
ただまっすぐ伸びる道も
そびえ立つ山の連なりも
すべてが魅力であり、すべてが”福井県”なのだ。
ここには、かに・ふぐ・恐竜もいない。
だけど、まぎれもなく福井県なのだ。
軒先に置かれる、人々の愛と思いやりも”福井”。
蔵を改装して作られた雑貨屋も”福井”。
窯で焼かれたピザに、近所の方が丹精込めて作った素材をトッピングする。
味と愛情で、人々を幸せにするのも”福井”。
改札のない、2両しかこない電車が来るのも”福井”
先入観やイメージは、誰かが発信してキャッチしたものから作られる。
福井といったら”恐竜”と答えていた私は、もういない。
”愛とオリジナリティーとありのままがぎゅっと詰まった場所”と答えるだろう。
取材先:鯖江市・南越前町・ORIONBAKE・ROSSO・JAPAN CRAFT HOUSE
取材時:2020年12月
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