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お買い物と綺麗なもの

春の陽気は美しく、ぼんやり曇った空も大きくてやさしい。まだすこし肌寒い空気と弱い風が、瑞々しい新たな季節の始まりを予感する。だから、せっかくお買い物に出たときには、なにか綺麗なものの写真をとってくるようになった。

春のもとでは何もかも穏やかに息吹いて、夏の力強さともちがう浮き足立つ心地がする。今日は緑の葉っぱを撮った。中央から丸く小さな葉っぱが、五角形を描くように伸び、それらの層が重なって葉っぱというよりこじんまりした花みたい。きみどり色と、黄色と、下の方に行くとすこし霞んだモスグリーンと。びっくりするほど丁寧にできているそれは、見ているだけで大切よ、愛しいよ、という気分にさせる。

家に帰ったら、その写真をみながら、ベランダに腰掛けて今年の春についてもの思う。目の前の大きなマンションに反響した車の走る音が、心をゆっくりしぼっていく。こんな春があったな、と思うような瞬間へと、ぴんととがっていく。だから、また春が来て幸せだな。

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