注目の中国企業16社 最新決算分析(2022年1~3月)
チャイトピでは、IT企業を中心に注目されている中国企業の業績を定期的に分析しています。
IT大手のテンセントやアリババなどに加えて、スマホ大手のシャオミや雑貨ブランドのMINISOなど注目を集めている企業16社の決算をまとめました。
2022年1~3月では中国のコロナ感染拡大とそれに伴う隔離などの厳しい対策が業界全体に深刻なダメージを与えた。中でも物流への影響により、サプライチェーンは混乱し、EV業界ではNIOなどが工場の稼働停止に陥っていた。そのため、全体的に業績は落ち込んでいるが、中には前年同期比で黒字転換を果たした企業も存在する。
■テンセント
・売上高:1,355億元(約2.7兆円) 前年同期比横ばい 市場予想を下回った
・純利益:234億元(約4,480億円) 前年同期比51%減少
純利益(Non-IFRS):255億元(約5,017億円) 前年同期比23%減少
・営業利益:372億元(約7,318億円) 前年同期比34%減少
・WeChatのMAU:12.9億人 前年同期比3.8%増加
四半期ベースでは上場以来で初めての売上高が横ばい、純利益が51%の減益となり、業績不振がさらに深刻化した。減益の理由としてはコスト・支出面における大幅な増加が一因。一般管理費を見てみると、株式配当の増加や研究開発費、雇用コストの上昇などにより267億元(約5,340億円)と前年比41%も増加していた。
事業別では収入の柱の一つであるオンラインゲーム事業では中国の未成年者保護政策が尾を引いており、国内ゲーム事業の収入は前年に比べてやや減少が見られた。また、海外ゲーム市場でもアフターコロナでユーザーの消費が減少していた。
広告事業では収入に大幅な減少が見られ、前四半期に比べて広告が占める売上高の割合はさらに2%減少していた。教育、ネットサービス、ECなどの業界で広告出稿の需要が弱まったことが一因。長引く広告市場の低迷により、ECや旅行業界などで広告主による支出が大きく縮小した。
フィンテック/toB事業では中国のコロナ情勢ぶり返しにより決済サービスが打撃を受けた。
業績の悪化に危機感を抱いたテンセントはコスト削減で改善を図っていた。5月では、現地メディアによるとゲーム事業や広告事業、クラウド事業で大規模なリストラが行われた。
■アリババ
・売上高:2,041億元(約4兆円) 前年同期比9%増加、市場予想を上回った
・純損失:162億元(約3,740億円) 前年同期より196%拡大
・営業利益:167億元(約3,285億円) 前年同期より黒字転換
・年間アクティブユーザー数:13.1億人 前年同期比16%増加
売上高はテンセント同様四半期ベースでは上場以来最低の伸び率を更新した。コロナ禍の影響により、サプライチェーンの混乱など事業全体が深刻なダメージを被った。しかし、市場の予想を上回ったことで同社の米国株価は一時15%近くまで高騰した。
また、保有する上場企業の株式価格の下落により純損失はさらに拡大した。
詳しい事業内容を見てみると、EC事業(BtoBtoC)ではタオバオ、Tmall(天猫)のGMVが初めて前年同期に比べて一桁の割合で減少した。激化する市場競争に消費の低迷が原因かと思われ、1~2月の連結GMVは横ばいとなり、3月ではコロナまん延の影響でGMVに減少が見られた。
海外市場ではウクライナ情勢によるサプライチェーンの混乱が越境EC(BtoC)事業と物流事業の「菜鳥(ツァイニャオ)」に打撃を与えた。
クラウド事業では当局からの規制を受けているオンライン教育などのネット業界由来の収入が減少していた。市場の低迷にネット業界からの需要の低下、コロナ禍の影響で伸び率も低迷していた。
中国国内のコロナ情勢は緩和し始めたものの、4~6月の業績は楽観視できない。アリババもコスト削減に着手し、1~3月で従業員は4,000名以上と全体の2%ほど減っていた。
■京東(JD)
・売上高:2,397億元(約4.6兆円) 前年同期比18%増加、市場予想を上回った
・純損失:30億元(約580億円) 前年同期より赤字転落
・営業利益:24億元(約472億円) 前年同期比41%増加
・年間アクティブユーザー数:5.8億人 前年同期比16%増加
中国EC市場シェア2位の京東(JD)グループも、四半期ベースの売上高の前年同期比伸び率は上場以来で最低となった。アリババ同様、コロナの流行と市場全体の消費が落ち込んでいることが影響を与えた。また、ユーザー規模の成長にも鈍化が見られた。
収益面では30億元と前年同期から赤字に転落し、前四半期に続く形となっていた。
赤字転落の理由として同社は:
・インフラの建設
・技術開発
・コロナで打撃を受けたパートナーへのサポート
などを挙げた。
また、宅配サービス会社「達達」の買収における株価の変動で、36億元の損失を計上したことも一因と見られる。
部門別の業績を見てみると、小売部門の収入は前年同期比17%増加し、営業利益も8%増と好調。物流部門では収入が前年同期比22%増加し、営業損失は55%縮小と収益化に向けて着実に進んでいた。
イノベーション部門では営業損失がさらに5%拡大していた。現地メディアによると、3月末にコミュニティ型共同購入ECサービス「京喜拼拼」の規模が縮小し、いくつもの地域で事業が中止になった。
同社は人員カットといったコスト削減で経営状況の改善を図っているが、コロナ禍で一部地域がロックダウンとなり、物流の停滞が起きていた。そのため、4月では通販サイトにおける注文のキャンセルが増え始め、その影響は5月にまで続いていた。
そうした中で、同社は年一度の大型セールスイベント「618」(6月18日)に賭けて割引に力を入れ、出店者にも優遇措置を設けるなど消費の刺激を狙っていた。
■美団(meituan)
・売上高:463億元(約9,005億円) 前年同期比25%増加、市場予想を上回った
・調整後純損失:36億元(約700億円) 前年同期より8%縮小
・営業損失:56億元(約1,100億円) 前年同期より17%拡大
・年間利用者数:6.9億人 前年同期比22%増加
・一人当たりの年間平均利用件数:37.2件 前年同期比22%増加
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